この記事は「会社設立を自分でやってみようか」と考えている人に向けたものです
会社設立は、専門家に頼まなくても自分でできます。法務局の公式サイトに申請書のひな形と記載例が公開されており、それに沿って書けば申請は通ります。
ただし、やることの数は多く、順番も決まっています。途中で間違えると、やり直しになる工程もあります。どこでつまずきやすいかを知ったうえで始めてください。
この記事では、実際に手を動かす順番に沿って手順を並べます。読んでみて「これはできそうだ」と思えるなら、自分でやる価値はあります。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
全体の流れをつかむ

会社設立の手続きは、大きく6つの工程に分かれます。順番は決まっているので、飛ばすことはできません。

合同会社なら④の定款認証が不要です。工程がひとつ減るうえ、公証人手数料もかかりません。自分でやる難易度は、合同会社のほうが低くなります。
工程のあいだには待ち時間もあります。印鑑の作成、公証役場の予約、法務局の審査。手を動かす時間そのものより、待ち時間のほうが長くなることもあります。
⑥の登記申請をした日が、会社設立の日になります。登記が完了した日ではありません。設立日にこだわりがあるなら、この点を押さえておいてください。
代行に頼む場合と比較すると、工程そのものは変わりません。誰が手を動かすかが違うだけです。おすすめの判断としては、自分の時間の価値と代行手数料を比べることになります。
全体でどれくらいかかるかは、準備の速さによります。基本事項が固まっていれば1〜2週間、決めるところから始めるならもっとかかります。
会社設立を自分でやるおすすめの進め方は、①に時間をかけることです。ここが固まっていないと、あとの工程で何度も戻ることになります。
① 基本事項を決める

定款を書く前に、会社の基本になる事項を決めます。ここが決まっていないと、書きようがありません。
決めること
- 商号(会社名)。使える文字と、前後に付ける会社の種類の表記に決まりがあります
- 本店所在地。自宅にするか、事務所を借りるか、バーチャルオフィスにするか
- 事業の目的。将来やる予定のものも含めて書いておく
- 資本金の額。登録免許税と消費税の判定に関わります
- 発起人と役員。誰が出資し、誰が取締役になるか
- 事業年度(決算月)。いつからいつまでを一期とするか
- 会社の機関設計(株式会社の場合)
2つ目の本店所在地は、あとから移転すると登記の変更が必要になり、登録免許税もかかります。管轄の法務局が変わる移転なら、費用はさらに増えます。最初の場所は慎重に決めてください。
1つ目の商号は、同じ住所に同じ商号の会社がないかを確認する必要があります。法務局で調べられますし、国税庁の法人番号公表サイトでも近い名称を探せます。
3つ目の事業の目的は、あとから変更すると登録免許税がかかります。将来やりそうなことも、この段階で入れておくのがおすすめです。
4つ目の資本金は、登録免許税の計算基礎になるだけでなく、消費税の納税義務の判定や、許認可の要件にも関わります。金額を決める前に、この記事群の資本金のカテゴリーもご覧ください。
7つ目の機関設計は、取締役を何人置くか、取締役会を設置するかといった話です。一人で始めるなら、取締役1名の形がいちばん簡素です。おすすめは、最初は簡素にしておくことです。あとから変更できます。
6つ目の事業年度は、青色申告の承認申請の期限にも影響します。会社設立の日から見て、いつ最初の決算を迎えるかを考えて決めてください。
出典法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」
② 会社印を作る

登記の申請には会社の代表者印が必要です。商号が決まったら、すぐに発注してください。作成に日数がかかります。
法務省の案内によると、印鑑の提出は任意とされていますが、オンライン申請でない限り実務上は用意することになります。また、印鑑証明書が必要な場面が多くあります。
この基準を外れた印鑑は登録できません。市販の既製品ではなく、会社名を入れて作ることになります。
印鑑には、法務局に届け出る際の大きさの決まりがあります。辺の長さが1センチメートルを超え、3センチメートル以内の正方形に収まるものという基準です。
よく作る3本
- 代表者印(実印)。登記に使います
- 銀行印。法人口座の届出印にします
- 角印(社印)。請求書や見積書に押します
銀行印を代表者印と兼ねることもできますが、実務では分けておくほうが安全とされています。紛失したときの影響が違うためです。
最低限、代表者印があれば会社設立の手続きは進みます。銀行印と角印は、必要になってから作ることもできます。
発注から到着まで数日から1週間程度かかることがあります。会社設立を自分でやる場合、この待ち時間も日程に入れておいてください。
印鑑の材質やサイズは店によってさまざまです。価格帯も幅があるので、比較して選んでください。おすすめの選び方は、欠けにくい材質を選ぶことです。長く使うものです。
なお、代表取締役本人がマイナンバーカードを使ってオンラインで登記申請をする方法もあります。この場合の印鑑の扱いについては、法務局の案内をご確認ください。
出典法務省「オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)」
③④ 定款を作って認証を受ける

自分でやる場合、いちばん手間がかかるのが定款です。会社の基本的なルールを書いた文書で、記載事項に決まりがあります。
絶対的記載事項(欠けると定款が無効になる項目)が欠けていると、定款そのものが無効になります。目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称および住所などがこれにあたります。
株式会社の場合、作成した定款は公証人の認証を受けます。日本公証人連合会の案内によると、公証人手数料は資本金の額に応じて3万円・4万円・5万円と定められています(2024年12月1日改定)。一定の要件を満たす場合は1万5,000円になるとされています。
定款には、絶対的記載事項のほかに、相対的記載事項と任意的記載事項があります。書かなくてもよいが書いておくと効力を持つもの、書いても書かなくてもよいものです。株式の譲渡制限や、公告の方法などがここに入ります。
ここで大きな分かれ道があります。紙の定款には収入印紙4万円が必要ですが、電子定款なら不要です。ただし、電子定款を自分で作るには、電子署名の環境を整える必要があります。

なお、公証人手数料は電子定款でも紙の定款でも同じです。差が出るのは収入印紙の部分だけです。ここを混同しないでください。
この比較のとおり、電子定款のほうが4万円安く済みます。ただし環境を整える手間があるので、この部分だけ専門家に頼むという選択もあります。
電子定款の作成を代行するサービスもあります。おすすめの使い方は、定款の中身は自分で考えて、電子化と認証の部分だけ任せることです。4万円の印紙代が浮くなら、代行費用と比較して割に合うことがあります。
合同会社は定款認証が不要です。作成は必要ですが、公証役場に行く工程がなくなります。会社設立を自分でやるなら、この差は大きいところです。
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⑤ 資本金を払い込む

定款の認証が済んだら(合同会社は定款を作成したら)、資本金を払い込みます。
ここで注意したいのが、この時点ではまだ法人口座を開けないという点です。会社がまだ登記されていないためです。発起人の個人口座に振り込む形になります。
払い込みでやること
- 発起人の個人口座に、資本金の額を振り込む
- 通帳の表紙、表紙裏、振込が記帳されたページのコピーを取る
- 払込証明書を作成し、コピーと合わせて綴じる
- 会社の代表者印を押す
ポイントは「振り込む」ことです。すでに口座に残高があっても、振込の記録が必要になります。誰がいくら払い込んだかを記録に残すためです。
発起人が複数いる場合は、それぞれが自分の分を振り込みます。誰がいくら出したかが記録に残るようにしてください。
定款の認証を受けた日より後の日付で振り込むのが原則とされています。順番を間違えると、やり直しになることがあります。
払込証明書には、払い込まれた金額の総額と、払込があった株式の数などを記載します。定款に書いた出資の額と一致していることを確認してください。
払込証明書の様式は、法務局の公式サイトで公開されている記載例を参考にできます。会社設立を自分でやるなら、ここも公式のひな形に沿って作るのが確実です。
通帳がないネット銀行を使っている場合は、取引明細を印刷したもので代用できることがあります。金融機関と法務局の取り扱いを確認してください。おすすめは、事前に管轄の法務局に聞いておくことです。
登記が完了して法人口座を開いたら、この資本金を法人口座に移します。ただし、移すこと自体は登記の要件ではありません。
⑥ 登記を申請する

最後が登記の申請です。本店所在地を管轄する法務局に提出します。
法務局の公式サイトには、登記申請書のひな形と記載例が公開されています。会社の種類や機関設計に応じて複数の様式があるので、自分の会社に合うものを選んでください。
申請に必要な主なもの
- 登記申請書
- 登記すべき事項を記録した書面または電磁的記録媒体
- 定款(認証を受けたもの。株式会社の場合)
- 払込証明書
- 就任承諾書
- 印鑑証明書(発起人・役員のもの)
- 登録免許税納付用台紙(収入印紙を貼る)
- 印鑑届書
登録免許税は、株式会社が資本金の額の0.7%(15万円に満たないときは15万円)、合同会社が資本金の額の0.7%(6万円に満たないときは6万円)とされています。
申請は、窓口・郵送・オンラインのいずれかで行えます。法務局の案内によると、代表取締役本人がマイナンバーカードを使ってオンラインで申請することもできるとされています。
登録免許税は収入印紙で納めるのが一般的です。金額が大きいので、郵便局や法務局内の販売所で購入することになります。
申請した日が会社設立の日になります。窓口の受付時間や、郵送の到着日を考えて、希望の日に間に合うように動いてください。
申請の前に、法務局の登記相談を利用する方法もあります。書類を持って行って確認してもらえることがあります。おすすめの使い方は、提出前に一度見てもらうことです。予約が必要な場合があるので、事前に確認してください。
書類に不備があると、法務局から連絡が来て補正することになります。会社設立を自分でやる場合、この補正のやりとりも見込んで日程を組んでおくことをおすすめします。
よくある質問

本当に自分でできますか
できます。法務局の公式サイトにひな形と記載例が公開されており、それに沿って進めれば申請は通ります。ただし、時間はかかります。数日から数週間の作業時間を見込んでください。
どこでつまずきやすいですか
定款の作成と、電子定款の環境づくりです。記載事項の漏れや、電子署名の設定でつまずく人が多いところです。ここだけ専門家に頼むという選択もあります。
なお、電子定款を自分で作らずに紙で進めるなら、環境づくりの手間はなくなります。印紙代4万円との差で判断してください。
間違えたらどうなりますか
法務局から補正の連絡が来ます。その場で直せるものもあれば、書類を作り直すこともあります。致命的な失敗になることは少ないものの、日程は延びます。
途中から専門家に頼めますか
頼めます。定款だけ、電子定款だけ、登記だけ、といった分け方もできます。全部を自分でやると決めてしまわず、比較しながら進めてください。おすすめは、やってみて判断することです。
まとめ|順番を守れば一人でも進みます

会社設立は自分でもできます。工程は決まっているので、順番どおりに進めれば形になります。
この記事で押さえたこと
- 工程は6つ。基本事項→印鑑→定款→認証→払い込み→登記申請。
- 合同会社は定款認証が不要なので、工程がひとつ減る。
- 登記を申請した日が会社設立の日になる。
- 電子定款なら収入印紙4万円が不要。ただし環境づくりが要る。
- 資本金は発起人の個人口座に振り込む。法人口座はまだ開けない。
- つまずいたら、その工程だけ専門家に頼むこともできる。
手続きの内容と金額は2026年8月時点で確認できたものです。制度と様式は変わりますので、実際の申請の前に法務局・法務省・日本公証人連合会の案内をご確認ください。
やってみて無理そうなら、途中からでも頼めます
全部を自分でやると決める必要はありません。定款の作成だけ専門家に頼む、電子定款の部分だけ代行してもらう、といった分け方もできます。
実際にやってみて、時間がかかりすぎると感じたら、その時点で相談してください。着手してから頼んでも遅くはありません。
手続きの内容と様式は変わることがあります。実際に申請する前に、法務局と日本公証人連合会の公式サイトで最新の案内をご確認ください。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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