この記事は「会社設立に税理士は要るのか、要らないのか」で止まっている人に向けたものです
先に結論めいたことを書いておきます。会社を作ること自体に、税理士は必須ではありません。登記の代理は司法書士の仕事ですし、定款の作成は行政書士でもできます。税理士がいなくても会社は設立できます。
ところが、設立してからの話になると事情が変わります。法人設立届出書は設立から2か月以内、青色申告の承認申請には期限があり、年金事務所への届出は5日以内。そして毎月の記帳と、年に一度の決算申告。これを全部自分でやるつもりがあるかどうかが、税理士が必要かどうかの分かれ目です。
この記事では、税理士に頼む場合と頼まない場合を、費用・手間・リスクの3点で比較します。会社設立のおすすめの進め方は人によって違うので、判断の材料になる形でまとめました。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
会社設立の手続きに、税理士は必須ではありません

まず事実の確認から。会社設立の登記申請を代理できるのは司法書士と弁護士です。定款の作成と認証の代行は行政書士もできます。税理士の本来の仕事は税務であって、登記そのものではありません。
では、なぜ会社設立のおすすめとして税理士法人がよく出てくるのか。答えは単純で、グループ内に司法書士や行政書士を抱えていて、窓口をひとつにまとめているからです。利用者から見れば、税理士法人に頼んだつもりでも、実務は提携する士業が担当しています。

ここを比較の出発点にすると、話が整理できます。会社設立のおすすめとして紹介されるサービスを、「登記をやってくれるところ」と「設立後を見てくれるところ」に分けて見る。名前が似ていても、売っているものが違うことに気づけます。
つまり、会社を作るだけなら税理士は要りません。税理士の価値は、設立の瞬間ではなく設立後にあるということです。ここを取り違えると、「設立手数料0円」という言葉だけで判断してしまいます。
設立後に待っている仕事を並べてみる

税理士が必要かどうかを判断するには、設立後にやることを具体的に知っておく必要があります。並べると次のようになります。

このうち、期限を逃すと取り返しがつかないのが青色申告の承認申請です。期限を過ぎるとその事業年度は青色申告ができず、欠損金の繰越しなどの扱いが変わります。設立初年度が赤字になることは珍しくないので、これは金額に直結します。
もうひとつ見落とされやすいのが、役員報酬を決める時期です。法人税の計算上、役員報酬は原則として設立から3か月以内に決めて、その事業年度は同じ額を払い続ける必要があります。あとから自由に増減できるものではありません。会社設立の直後は売上の見通しが立っていないことが多いので、ここは慎重に決めたいところです。
この「3か月以内」と、青色申告の承認申請の期限がほぼ同じ時期に来ます。設立してすぐは事業の立ち上げで忙しいので、期限の管理を誰がやるかを決めておかないと、両方とも危うくなります。おすすめとしては、登記が終わった日に、この2つの期限をカレンダーに入れてしまうことです。
いちばん多い失敗
会社設立の手続きに集中していて、設立後の届出を忘れる。とくに年金事務所への5日以内という期限は、登記が完了する前に来ることもあります。会社設立のおすすめを比較するときは、この届出を誰が出すのかまで決めておいてください。
頼まない場合にかかるもの

税理士に頼まない場合、顧問料はかかりません。かわりに、次のものが自分に乗ってきます。
自分でやる場合に必要なもの
- 会計ソフトの利用料(年額で数千円から数万円)
- 毎月の記帳の時間(事業の規模によりますが、月に数時間)
- 決算と申告の作業(初年度は調べる時間を含めて数十時間かかることも)
- 届出の期限を管理する手間
- 税制改正を追いかける手間
法人の決算申告は、個人の確定申告とは別物です。別表の作成、消費税の判定、減価償却の計算。簿記の知識がある人でも、初年度は相当な時間を取られるのが普通です。
それでも、事業が小さいうちは自分でやる選択も十分にありえます。取引の数が少なければ記帳の負担は軽いですし、会計ソフトが判断を助けてくれます。会社設立の直後、売上がまだ立っていない時期に月3万円の顧問料を払うのは重いという判断も理解できます。
自分でやると決めた場合におすすめなのは、会計ソフトを設立と同時に入れてしまうことです。設立後に慌てて入れると、それまでの領収書をまとめて入力することになります。最初から連携させておけば、日々の入力は数分で済みます。会社設立の準備と一緒に済ませておくと、あとが楽です。
| サービス | 利用料 | 利用条件 | 対応範囲 |
|---|---|---|---|
| freee会社設立 freee株式会社/クラウドツール | 利用料金0円 | 電子定款費用の負担を受けるにはfreee会計の年間契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
| マネーフォワード クラウド会社設立 株式会社マネーフォワード/クラウドツール | サービス利用料0円 | 電子定款を無料にするには有料プラン(ひとり法人・スモールビジネス・ビジネス)の契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後のクラウドサービス連携 |
| 弥生のかんたん会社設立 弥生株式会社/クラウドツール | 登録および書類作成は無料 | 登記まで一貫して同サービスを使う必要がある。途中からの利用は不可。株式会社・合同会社のみ | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
| 法人設立ワンストップサービス デジタル庁/公的サービス | 無料(登録免許税などの実費は別) | マイナンバーカードと電子署名が必要。2026年8月時点で一部手続の新規申請を控えるよう告知あり | 設立登記と設立後の届出をまとめて申請 |
頼む場合にかかるもの

税理士に頼む場合は、顧問料がかかります。公式サイトに示されている金額を並べると、月額2万2,000円から3万円前後が目安として出てきます。決算申告が別料金の場合もあります。
| サービス | 代行手数料 | 利用条件 | 対応範囲 | 登記までの日数 |
|---|---|---|---|---|
| 税理士法人経営サポートプラスアルファ 経営サポートプラスアルファ/税理士法人 | 代行費用 実質0円(設立後の顧問契約が前提。顧問料 月額22,000円) | 設立後の顧問契約が前提 | 設立手続きから設立後の税務顧問まで | 最短1日、通常は1週間程度 |
| ベンチャーサポート税理士法人 ベンチャーサポートグループ/税理士法人 | 設立後の税理士顧問契約(月額3万円前後)とセットなら、行政書士・司法書士の手続き代行手数料は0円 | 手数料0円は設立後の顧問契約とセットの場合。設立のみの依頼可否は公式サイトに記載なし | 設立手続き、設立後の税務顧問、社会保険・労務顧問、融資、補助金、経営相談。グループに税理士法人・社会保険労務士法人・司法書士法人 | 登記申請まで5営業日ほど |
| 会計事務所SoVa 株式会社SoVa/税理士法人・バックオフィス代行 | 顧問契約により会社設立のサポートが0円 | 顧問契約が前提(設立後の継続サポートと合わせて依頼すると設立サポート費用0円)。月額29,800円〜(税抜)。特殊な業種・組織形態は事前相談 | 設立サポートに加えて記帳代行、社会保険・労務、税務顧問。給与計算・融資・補助金は公式サイトに記載なし | 最短2週間で登記完了が可能と記載(書類準備の速さにより変動) |
| 明治通り税理士法人 明治通り税理士法人/税理士法人 | 設立後の顧問契約とセットで設立手数料が実質0円になるプランありと記載。金額は公式サイトに記載なし | 実質0円は設立後の顧問契約とセットの場合 | 設立前の相談から登記後の税務届出・経理体制の構築までワンストップ。全国対応 | 公式サイトに記載なし |
そのかわりに得られるものを挙げると、次のようになります。
この4つのうち、金額に直接効くのは2つ目です。資本金・決算月・役員報酬をどう設定するかで、初年度の税額はかなり変わります。設立してから相談しても、決まってしまったものは変えられません。比較の観点としては、「設立後に何をしてくれるか」だけでなく「設立の前に相談に乗ってくれるか」も見ておきたいところです。
なお、税理士法人の「設立手数料0円」は、この顧問契約が前提であることがほとんどです。設立の手数料が浮くぶん、顧問料で回収するという構造です。会社設立のおすすめを費用で比べるなら、1年目の合計で見てください。
1年目の費用を並べて比較する

株式会社・資本金100万円未満・電子定款という同じ条件で、1年目の費用を並べてみます。金額はあくまで例です。


この2つを比較して分かるのは、設立の費用そのものはほとんど変わらないということです。差が出るのは、記帳と申告をどうするかの部分だけ。会社設立のおすすめを選ぶという話は、実質的に「設立後の経理をどうするか」を選ぶ話だと言い換えられます。
この例では差が13万円ほど。ただし自分でやる側には、記帳の時間が乗っていません。月に5時間なら年60時間。この60時間をどう見るかで、会社設立のおすすめは変わります。
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こういう人は頼んだほうがよい、というめやす

一律の正解はありませんが、判断の材料になるめやすを挙げます。
このうち「従業員を雇う」と「融資を受ける」は、判断が変わりやすいところです。従業員を雇えば給与計算と源泉徴収、年末調整が発生しますし、融資を受けるには事業計画と試算表が要ります。どちらも、独学でこなすには重い作業です。
逆に、当面は一人で、取引先も数社という状態なら、自分でやってみる価値はあります。やってみて手に負えないと分かったら、そこから頼めばよいだけの話です。会計ソフトのデータをそのまま渡せる事務所を選べば、途中からの依頼でも移行の手間は小さく済みます。

頼むなら、いつ相談するのがよいか

税理士に頼むと決めたなら、相談の時期は会社設立の手続きを始める前がおすすめです。理由は、設立のときに決めることのなかに、あとから変えにくくて税額に効くものがあるからです。
設立前に相談すると効くこと
- 資本金の額:1,000万円以上にすると、設立1期目から消費税の納税義務が生じます。
- 決算月:初年度の期間の長さが変わります。繁忙期と重なると決算作業が苦しくなります。
- 事業目的:許認可や融資の場面で見られます。あとから追加すると変更登記の費用がかかります。
- 役員報酬:設立から3か月以内に決めるのが原則です。金額によって社会保険料と税額が変わります。
このうち資本金と決算月は、登記が終わってから変えるとなると手間も費用もかかります。設立してから相談すると、選べたはずの選択肢がもうないということが起こります。
設立後に相談する場合でも、遅すぎるということはありません。青色申告の承認申請の期限に間に合ううちに相談すれば、初年度から青色申告ができます。会社設立のおすすめの順番としては、設立前がいちばん、次が設立直後です。
まとめ|設立に税理士は要らない、設立後は要ることが多い

会社設立の手続きそのものに、税理士は必須ではありません。ただし設立後の届出・記帳・申告まで含めると、判断は変わります。
この記事で押さえたこと
- ✓登記の代理は司法書士の仕事。税理士法人はグループ内の士業がまとめて処理している。
- ✓設立後は、5日以内・1か月以内・2か月以内と期限のある届出が続く。
- ✓青色申告の承認申請の期限を逃すと、その事業年度は青色申告ができない。
- ✓1年目の現金の出方は自分でやるほうが小さいが、記帳と申告の時間が自分に残る。
- ✓頼むなら、資本金と決算月を決める前、つまり設立手続きを始める前が最もよい。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。制度は変わりますので、実際の手続きの前に税務署・年金事務所の案内をご確認ください。個別の判断は税理士にご相談ください。
設立ではなく、設立後で判断してください
税理士が必要かどうかを、会社設立の手続きだけを見て判断すると答えを間違えます。判断すべきは、来年の決算申告を自分で作れるかどうかです。作れるなら要りませんし、無理そうなら必要です。
決めきれないなら、設立時に無料相談だけ受けておくのも手です。顧問契約はしなくても、資本金や決算月について意見をもらうだけで、後々の税額が変わることがあります。相談は無料のところが多いので、聞くだけ聞いてみてください。
顧問料の相場や税理士の選び方については、同じカテゴリーの別の記事でも扱っています。あわせてご覧ください。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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