この記事は「会社設立はできたが、これから全部ひとりでやれるのか不安」という人に向けたものです
一人社長には、経理も総務も法務も、全部自分に回ってきます。営業をして、納品して、請求して、記帳して、届出を出して、申告する。会社設立の直後にこれを全部やろうとすると、本業に使う時間がなくなります。
だからこそ、最初に線を引く必要があります。自分でやるところと、人に任せるところ。全部を自分でやろうとしないことが、一人で会社を続けるコツです。
この記事では、会社設立のあとに発生する作業を並べ、どこを任せるとよいかを比較します。任せる場合の費用の目安も示すので、判断の材料にしてください。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
会社設立のあとに発生する作業を並べる

まず、何が発生するのかを把握します。頻度で分けると整理しやすくなります。
こうして並べると、毎月と毎年の作業が思ったより多いことが分かります。一人社長の場合、これを全部自分で抱えると、月に十数時間は取られる計算になります。
会社設立の準備をしている段階では、ここまで想像しにくいところです。設立の手続きが終わってからが本番だと思っておいてください。
作業を並べたら、それぞれにどれくらい時間がかかりそうかを書き添えてみてください。記帳が月2時間、請求が月1時間、決算が年20時間。数字にすると、どこを削るべきかが見えます。会社設立の直後は感覚が分からないので、最初の3か月は実際にかかった時間を記録しておくのがおすすめです。
ただし、全部が難しいわけではありません。会計ソフトを入れて口座を連携させれば、記帳の負担はかなり減ります。仕組みを整えることで、自分でやれる範囲は広がります。
なお、この一覧を見て「思ったより多い」と感じるのは自然なことです。個人事業のときと比較すると、法人になったぶん手続きが増えています。おすすめの受け止め方は、多いことを前提にして仕組みを作ることです。気合いでは続きません。
この記事では、それぞれについて「自分でやるか、任せるか」の目安を示していきます。
設立直後の一度きりの作業

設立直後の作業は、一度きりです。ここを丁寧にやっておくと、そのあとが楽になります。

登記事項証明書と印鑑証明書は、必要になる場面が多いので多めに取っておくと安心です。法人口座の開設、許認可の申請、取引先への提出、融資の申し込み。そのつど法務局に行くのは手間なので、最初にまとめて取っておくのがおすすめです。ただし発行から一定期間内のものを求められることがあるので、大量に取りすぎないよう注意してください。
このうち、任せやすいのは税務署への届出です。税理士に頼めば、まとめて出してもらえます。逆に、法人口座の開設は本人が申し込む必要があります。
デジタル庁の法人設立ワンストップサービスを使うと、設立の登記と設立後の届出をマイナポータル上でまとめて申請できます。マイナンバーカードと電子署名が必要です。2026年8月時点では一部手続の新規申請を控えるよう告知も出ていたので、利用の前に稼働状況を確認してください。
法人口座の開設には時間がかかることがあります。金融機関によって審査の期間が違うので、複数に同時に申し込むという方法もあります。会社設立の直後は入金も支払いも発生するので、口座がないと事業が回りません。おすすめは、登記が完了したその日に申し込むことです。
会社設立のおすすめの段取りとしては、登記が完了した日に、この6つを予定表に入れてしまうことです。期限のあるものが含まれているので、後回しにすると危うくなります。
毎月の作業をどう回すか

毎月やることのなかで、いちばん時間を取られるのが記帳です。ここを仕組み化できるかどうかで、負担がまるで変わります。
記帳を軽くする仕組み
- ✓法人口座とクレジットカードを会計ソフトに連携させる
- ✓経費の支払いを法人カードに集約する
- ✓領収書はその場でスマートフォンで撮影して登録する
- ✓よく使う取引に自動仕訳のルールを設定する
- ✓月末の決まった日に30分の予定を入れる
この5つをやっておくと、月末の作業は自動で作られた仕訳を確認して修正するだけになります。慣れれば15分から30分で終わります。逆に、これをやらずに領収書を溜めると、決算前に数か月分をまとめて入力することになります。
| サービス | 利用料 | 利用条件 | 対応範囲 |
|---|---|---|---|
| freee会社設立 freee株式会社/クラウドツール | 利用料金0円 | 電子定款費用の負担を受けるにはfreee会計の年間契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
| マネーフォワード クラウド会社設立 株式会社マネーフォワード/クラウドツール | サービス利用料0円 | 電子定款を無料にするには有料プラン(ひとり法人・スモールビジネス・ビジネス)の契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後のクラウドサービス連携 |
| 弥生のかんたん会社設立 弥生株式会社/クラウドツール | 登録および書類作成は無料 | 登記まで一貫して同サービスを使う必要がある。途中からの利用は不可。株式会社・合同会社のみ | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
源泉徴収した所得税の納付も毎月です。ただし、従業員が常時10人未満の場合は、申請により年2回にまとめて納付できる特例があります。一人社長ならこの特例を使えることが多いので、検討してみてください。
社会保険料の納付も毎月あります。口座振替にしておけば、払い忘れがなくなります。会社設立の直後に手続きしておくのがおすすめです。納付書で毎月払う形にすると、その手間が毎月続きます。
請求書の発行も毎月の作業です。会計ソフトに請求書の機能が含まれているものを使えば、発行と同時に売上が計上されます。会社設立のおすすめの進め方としては、この連携も含めてソフトを選ぶことです。
毎年の作業は、任せることを前提に考える

年に一度の作業は、量も難易度も高くなります。ここは任せることを前提に考えたほうが現実的です。
年末調整については、一人社長でも対象になります。自分の分だけなので量は多くありませんが、保険料控除の書類をそろえたり、税額を計算したりする作業は発生します。会計ソフトの給与機能を使えば自動で計算されるので、そこは仕組みで解決できます。
このうち、決算と申告を税理士に頼む場合の相場は、単発で10万円前後という水準が複数の解説記事で紹介されています。顧問契約を結べば、月々の相談も含めて対応してもらえます。
一人社長で、取引の数が少ないうちは自分でやることも可能です。会計ソフトによっては申告書の作成機能が含まれています。ただし、はじめての決算で自力でやるのは、想像よりかなり時間がかかります。
自分でやる場合と任せる場合を比較しておくと、初年度の申告に自分で取り組むと数十時間かかることがあります。10万円前後の報酬と、この時間を比べてみてください。時間あたりの単価で考えると、任せたほうが得になる人は多いはずです。
会社設立のおすすめの判断としては、初年度だけでも税理士に見てもらう形です。一度やり方を見ておけば、2期目以降に自分でやる選択もできます。
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自分でやるところと任せるところの線引き

線引きの基準は単純です。その作業に使う時間を、本業に使ったらいくらの価値になるか。これを超える費用でなければ、任せたほうが得です。

おすすめの線引きは、記帳は自分、決算と申告は任せるという形です。記帳は仕組みを作れば軽くなりますし、データが自分の手元にあるので身軽です。決算と申告は難易度が高く、間違えたときの影響も大きいところです。
逆におすすめしないのは、決算と申告だけを自分でやろうとして、記帳を溜めてしまうことです。記帳ができていない状態で決算に取りかかると、まず数か月分の入力から始めることになります。順序としては、記帳を毎月きちんとやることのほうが先です。
この形にすると、税理士側も作業が減るので、顧問料の交渉がしやすくなります。お互いに都合のよい組み合わせです。
線引きを見直すおすすめのタイミングは、年に一度、決算が終わった直後です。その1年で何にどれだけ時間を使ったかを振り返り、来年はどこを任せるかを決める。会社設立から数年は、この見直しを続けると無理なく回ります。
事業が育って取引が増えたら、記帳も任せる形に切り替えればよいでしょう。会社設立の直後の線引きを、ずっと守る必要はありません。
一人だからこそ気をつけたいこと

一人で会社を回すときの弱点は、能力ではなく相談相手がいないことです。判断に迷ったときに聞ける相手がいないと、決められないまま時間が過ぎます。
一人社長が陥りやすいこと
- ✓期限のある届出を忘れる。声をかけてくれる人がいないため。
- ✓判断に迷って先延ばしにする。相談相手がいないため。
- ✓会社と個人のお金を混ぜてしまう。区別する人がいないため。
- ✓本業が忙しくなると経理が止まる。優先順位が下がるため。
- ✓数字を見ないまま1年が過ぎる。報告する相手がいないため。
いずれも、仕組みで防げます。期限はカレンダーに入れる。判断に迷ったら顧問税理士に聞く。会社と個人の口座を完全に分ける。月末に30分の予定を固定する。数字は月に一度眺める。
相談相手は税理士だけとは限りません。同業の経営者、商工会議所の相談窓口、創業支援の担当者。おすすめは、複数の相談先を持っておくことです。税務のことは税理士、事業のことは同業者、制度のことは公的な窓口。使い分けると判断が早くなります。
顧問契約の価値は、税務の作業だけではありません。月に一度、数字について話す相手ができることが、一人社長にとっては大きな意味を持ちます。会社設立のおすすめとして、この点も含めて検討してみてください。

人を雇うときに増えること

一人社長のまま続ける前提で書いてきましたが、人を雇う場合には作業が増えます。会社設立の段階で予定があるなら、あらかじめ知っておいてください。
人を雇うと増える作業
- 労働条件の通知と、雇用契約の締結
- 社会保険(健康保険・厚生年金)の資格取得の手続き
- 労働保険(労災保険・雇用保険)の成立手続きと加入
- 毎月の給与計算と、源泉徴収
- 年末調整の対象者が増える
- 就業規則の作成(常時10人以上を雇う場合)
労働保険については、厚生労働省が適用と徴収について案内しています。労災保険は、従業員を1人でも雇えば原則として加入が必要です。
給与計算は、会計ソフトの給与機能や、給与計算のサービスで対応できます。ただし、社会保険と労働保険の手続きは書類が多く、社会保険労務士に頼む選択もあります。一人社長の状態と比べると、事務の量は明らかに増えます。
会社設立のおすすめの考え方としては、人を雇う前にこの作業量を把握しておくことです。採用の判断は、給与だけでなく事務の負担も含めて考えてください。
まとめ|線を引いて、仕組みで回す

一人社長は、経理も総務も自分の仕事になります。全部を自分で抱えず、線を引いて仕組みで回すことが続けるコツです。
この記事で押さえたこと
- ✓設立直後の作業は一度きり。登記完了の日に予定表へ入れてしまう。
- ✓記帳は仕組みを作れば月30分で回る。口座とカードの連携が要。
- ✓決算と法人税の申告は、初年度だけでも任せる価値がある。
- ✓線引きの基準は、その時間を本業に使ったらいくらの価値になるか。
- ✓一人社長の弱点は相談相手がいないこと。仕組みと顧問で補う。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。制度は変わりますので、実際の手続きの前に税務署・年金事務所・労働基準監督署の案内をご確認ください。個別の判断は、税理士や社会保険労務士にご相談ください。
全部やろうとしないでください
一人社長がつまずくのは、能力の問題ではなく時間の問題です。本業に使える時間が減ると、事業そのものが伸びません。経理に月10時間かけるより、その10時間で営業したほうが会社のためになる、ということは十分にあります。
任せる範囲は、事業の成長に合わせて変えていけばよいものです。会社設立の直後は全部自分でやって、忙しくなったら記帳を任せ、さらに忙しくなったら申告も任せる。この順番で構いません。
大事なのは、自分がいま何に時間を使っているかを把握することです。それが分かれば、どこを任せるべきかも見えてきます。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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