この記事は「一人で会社設立をしてよいものか、個人事業のままがよいのか」で迷っている人に向けたものです
役員が自分ひとりの会社設立は、いまでは特別なことではありません。取締役1名だけの株式会社を作れますし、合同会社なら社員が自分ひとりで構いません。むしろ、一人での会社設立が標準的な形になっています。
とはいえ、個人事業のまま続けるという選択もあります。会社にすれば設立費用がかかり、赤字でも法人住民税の均等割が発生し、社会保険への加入も必要になります。法人化は、得になる場面と負担が増える場面の両方があります。
この記事では、一人での会社設立と個人事業のままを、費用・手間・社会保険・信用の4点で比較します。数字は一次情報で確認できたものだけを使い、判断の材料になる形でまとめました。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
一人でも会社は作れます

まず、事実の確認からです。株式会社は取締役1名から設立できます。合同会社も、社員が自分ひとりで構いません。どちらの形態でも、一人での会社設立が可能です。
株式会社の場合、その1名が取締役であり代表取締役になります。合同会社なら、業務執行社員であり代表社員です。名刺の肩書きが変わるので、この違いは知っておいてください。
どちらを選ぶかは、外部から出資を受ける予定があるかどうかでほぼ決まります。一人で会社設立をして、当面ひとりで続けるつもりなら、合同会社が選ばれることが多いのは、費用と手間の面で有利だからです。
ただし、取引先や採用の場面で会社形態を見られる業種なら、株式会社を選ぶ意味があります。会社設立のおすすめは、事業の内容によって変わります。
株式会社と合同会社を比較すると、一人での会社設立ではどちらもさほど手間が変わりません。強いて言えば、合同会社のほうが定款認証の工程がないぶん軽くなります。費用を優先するなら合同会社がおすすめ、対外的な見え方を優先するなら株式会社がおすすめ、という素直な分かれ方になります。
なお、一人で会社設立をしても、あとから役員や社員を増やすことはできます。最初から大きな器を用意する必要はありません。
法人化すると増える費用

個人事業から法人にすると、増える費用があります。まずここを押さえてください。

設立費用は一度きりですが、法人住民税の均等割は毎年かかります。赤字でも納める必要があり、資本金の額と従業員数に応じた金額です。自治体によって金額が違うので、本店を置く予定の自治体の案内で確かめてください。
さらに、決算と法人税の申告が毎年必要です。個人の確定申告とは別物で、別表の作成や消費税の判定が入ります。自分で作るのが難しければ、税理士に頼むことになり、その費用もかかります。
つまり、法人化すると売上に関係なく出ていくお金が増えます。この固定費を上回る利点があるかどうかが、判断の分かれ目になります。
個人事業のときの費用と比較しておくと、開業届の提出に費用はかかりませんし、赤字なら所得税も住民税の所得割もかかりません。法人にすると、この「赤字でもかかるお金」が発生します。おすすめの考え方は、この固定費を年額で書き出して、事業の利益と並べてみることです。
逆に言えば、事業の規模が小さいうちは、個人事業のままのほうが身軽です。会社設立のおすすめのタイミングは、この固定費を負担しても釣り合う規模になったときです。
社会保険の扱いが変わります

法人化でいちばん大きく変わるのが、社会保険です。法人は原則として社会保険の適用事業所になり、報酬を受ける役員は加入対象になります。
個人事業主のときは国民健康保険と国民年金でしたが、法人になると健康保険と厚生年金になります。保険料は会社と個人で折半しますが、一人社長の場合は結局どちらも自分が出すことになります。
保険料は、役員報酬の額をもとにした標準報酬月額によって決まります。日本年金機構の案内によると、標準報酬月額は等級に分かれていて、それぞれの等級ごとに保険料が定められています。役員報酬をいくらにするかで、保険料が変わるという関係です。
社会保険まわりで押さえること
- 法人は原則として社会保険の適用事業所になる
- 報酬を受ける役員は加入対象になる
- 保険料は役員報酬をもとにした標準報酬月額で決まる
- 会社負担分と個人負担分があり、一人社長なら実質的にどちらも自分の負担
- 新規適用届は、事実発生から5日以内に年金事務所へ提出する
最後の期限に注意してください。設立から5日以内という短い期限です。会社設立の直後は事業の立ち上げで忙しい時期ですが、これは忘れられません。
国民健康保険と健康保険を比較すると、扶養の扱いが違います。健康保険では、要件を満たす家族を扶養に入れられます。家族がいる場合、この違いが保険料の総額に効いてくることがあります。おすすめは、家族構成を含めて試算してもらうことです。
厚生年金は将来受け取る年金額にも関わるので、保険料が増えることが損だとは限りません。目先の負担だけでなく、長い目でも考えてみてください。
税金の考え方が変わります

個人事業主のときは、事業の利益がそのまま自分の所得になり、所得税と住民税がかかりました。法人化すると、この構造が変わります。
会社の利益には法人税がかかります。自分は会社から役員報酬を受け取り、その報酬に所得税と住民税がかかります。会社と個人という2つの財布に分かれるのが法人化の特徴です。
役員報酬は給与所得として扱われるので、給与所得控除が使えます。一方で、役員報酬は原則として設立から3か月以内に決めて、その事業年度は同じ額を払い続ける形になります。途中で自由に増減できません。
消費税についても扱いが変わります。事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の新設法人は、設立1期目から納税義務があります。1,000万円未満なら、設立1期目と2期目は免除の対象になりうるとされていますが、特定新規設立法人に該当する場合など他の要件でも扱いが変わります。
個人事業の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が上がります。法人税は税率の構造が違うので、利益がある水準を超えると法人のほうが有利になる場面が出てきます。ただしこれは社会保険料や均等割を含めずに比較した場合の話で、実際にはそれらを足して比べる必要があります。
どちらが有利かは、利益の額と家族構成によって変わります。一律の正解はありません。会社設立を検討する段階で、税理士に自分の数字を当てはめて試算してもらうのがいちばん確実です。
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信用と、取引の広がり

法人化の理由として挙げられることが多いのが、信用です。取引先によっては法人としか契約しないところがありますし、法人口座があることで支払いの形が整うこともあります。
ただし、会社設立をした直後は、法人としての実績がありません。設立したばかりの法人が、個人事業主よりそれで信用されるわけではないという点は押さえておいてください。
法人口座の開設も、設立直後は審査に時間がかかることがあります。事業の実態を示す資料(Webサイト、契約書、請求書など)を用意しておくと話が早く進みます。
採用の面でも比較しておくと、法人であれば社会保険を用意できるので、応募者にとっての条件は整いやすくなります。人を雇う予定があるなら、法人化はおすすめできる方向です。逆に、当面ひとりで続けるなら、この利点は活きません。
信用のために法人化するなら、その信用を必要とする場面が実際にあるかどうかを確かめてください。「そのうち必要になるかもしれない」という理由だけで固定費を増やすのは、おすすめしません。
判断のしかた|5つの質問

法人化するかどうかは、次の5つの質問で整理できます。
判断のための5つの質問
- 事業の利益は、法人化の固定費(均等割・決算申告の費用)を上回りますか。
- 法人としか取引しない相手や、法人であることを求められる場面がありますか。
- 社会保険に加入することを、負担と見ますか、それとも将来への備えと見ますか。
- 毎年の決算と申告を、自分でやるか人に任せるか決まっていますか。
- この事業を数年以上続ける見通しがありますか。
5つ目が意外と大事です。会社を作るのは簡単ですが、たたむのは手間も費用もかかります。解散と清算の手続きが必要で、登記も複数回発生します。短期で終わる見込みの事業なら、個人事業のままのほうが身軽です。

このチェックのおすすめの使い方は、いま答えを出すのではなく、半年後にもう一度やってみることです。事業の状況は変わります。いま2つしか当てはまらなくても、半年後に4つになっているかもしれません。
4つ以上に当てはまるなら、会社設立を検討する段階にあると言えます。逆に、2つ以下なら、もう少し個人事業のまま様子を見るという判断も合理的です。
一人で会社設立をするときの依頼先

一人での会社設立は、発起人も役員も自分ひとりなので、手続きは比較的軽くなります。書類の数も、押印の箇所も少なくて済みます。
| サービス | 代行手数料 | 利用条件 | 登記までの日数 |
|---|---|---|---|
| 会社法人センター 井坂司法書士事務所&行政書士井坂事務所/司法書士・行政書士 | 8,360円(税込) | 追加料金や税理士契約は不要と明記 | 2〜6営業日で設立完了 |
| 会社設立サポート事務局 行政書士法人東京総合行政事務所/司法書士・行政書士 | 株式会社48,000円(フルサポート)/35,000円(バリュー)、合同会社45,000円(フルサポート)/35,000円(バリュー) | 税務顧問契約は不要と明記 | 7営業日(フルサポート)/3営業日で書類納品(バリュー) |
| 税理士法人経営サポートプラスアルファ 経営サポートプラスアルファ/税理士法人 | 代行費用 実質0円(設立後の顧問契約が前提。顧問料 月額22,000円) | 設立後の顧問契約が前提 | 最短1日、通常は1週間程度 |
| ベンチャーサポート税理士法人 ベンチャーサポートグループ/税理士法人 | 設立後の税理士顧問契約(月額3万円前後)とセットなら、行政書士・司法書士の手続き代行手数料は0円 | 手数料0円は設立後の顧問契約とセットの場合。設立のみの依頼可否は公式サイトに記載なし | 登記申請まで5営業日ほど |
| 会社設立完全代行ネットテラス 司法書士・行政書士みなづき法務事務所/司法書士・行政書士 | 株式会社38,000円/合同会社35,000円 | 税理士のような強制顧問はないと明記 | 公式サイトに記載なし |
| freee会社設立 freee株式会社/クラウドツール | 利用料金0円 | 電子定款費用の負担を受けるにはfreee会計の年間契約が必要 | 株式会社は約2週間、合同会社は1〜2週間程度 |
| 行政書士しのはら事務所 行政書士しのはら事務所/司法書士・行政書士 | 合同会社の電子定款作成 5,500円(税込)。株式会社は公式サイトに記載なし | 公式サイトに記載なし | 通常は即日〜翌営業日以内に電子定款を送付 |
| マネーフォワード クラウド会社設立 株式会社マネーフォワード/クラウドツール | サービス利用料0円 | 電子定款を無料にするには有料プラン(ひとり法人・スモールビジネス・ビジネス)の契約が必要 | 公式サイトに記載なし |
一人での会社設立なら、書類作成に絞った安いサービスでも十分に進められます。発起人が複数いる場合と違って、印鑑証明書を集める手間もありません。
一方、設立後の税務まで任せたいなら、税理士法人にまとめて頼む形もあります。役員報酬の決め方や社会保険の手続きについて相談できるのは、一人社長にとって心強いところです。相談相手がいないのが、一人での事業のいちばんの弱点だからです。
どちらを選ぶかは、設立後の経理を自分でやるつもりがあるかどうかで決まります。会社設立のおすすめは、この一点で分かれます。
まとめ|固定費を上回る利点があるかで決まります

一人での会社設立は、いまでは標準的な形です。ただし、個人事業のまま続けるという選択も十分に合理的です。
この記事で押さえたこと
- 株式会社は取締役1名から、合同会社は社員1名から設立できる。
- 法人化すると、設立費用に加えて法人住民税の均等割が毎年かかる。
- 法人は原則として社会保険の適用事業所になり、報酬を受ける役員は加入対象になる。
- 新規適用届は事実発生から5日以内。設立直後の期限としては最も短い。
- 会社を作るのは簡単だが、たたむのは手間も費用もかかる。続ける見通しも判断材料。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。制度は変わりますので、実際の判断の前に年金事務所・税務署・法務局の案内をご確認ください。個別の試算については、税理士にご相談ください。
数字だけでなく、続けやすさで決めてください
法人化するかどうかは、税額の試算だけでは決まりません。毎年の決算と申告、社会保険の手続き、帳簿の管理。これらを続けられるかどうかも同じくらい大事です。
会社設立をしてから「思ったより手間がかかる」と感じる人は少なくありません。だからこそ、設立の前に1年間の作業量を想像してみてください。自分でやるのか、人に任せるのか。任せるなら、その費用も含めて計算に入れてください。
判断に迷うなら、税理士の無料相談で自分の数字を当てはめて試算してもらうのがいちばん早道です。相談は無料のところが多いので、聞くだけ聞いてみてください。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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