この記事は「自宅の住所を登記したくないが、オフィスを借りる余裕もない」人に向けたものです
会社設立をするとき、本店所在地は登記事項として公開されます。自宅で事業を始める人にとって、自宅の住所が誰でも見られる状態になるのは気になるところです。かといって、オフィスを借りるには費用がかかります。
その間を埋めるのがバーチャルオフィスです。月額数百円から数千円で住所を借り、そこを本店として登記する。会社設立の初期費用を抑えつつ、自宅の住所を公開せずに済みます。
ただし、いくつか確かめておきたい点があります。許認可が必要な業種では使えないことがあり、法人口座の審査でも説明を求められることがあります。この記事では、使う前に確かめるべき点を整理します。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
バーチャルオフィスの住所は登記に使えます

結論から書くと、バーチャルオフィスの住所を本店として登記することはできます。株式会社でも合同会社でも同じです。
会社法には、本店所在地について「実際に事業を行っている場所でなければならない」といった制限はありません。登記の手続き上、バーチャルオフィスの住所が拒まれることはないのが通常です。
ただし、これは「登記できる」という話であって、「どんな場面でも問題ない」という意味ではありません。許認可、法人口座、取引先からの見え方。この3つで影響が出ることがあります。
バーチャルオフィスを使う利点
- ✓自宅の住所を登記事項として公開せずに済む
- ✓オフィスを借りるより費用がかからない
- ✓都心の住所を使えることがある
- ✓郵便物の受取と転送を任せられる
- ✓会議室を必要なときだけ使えるプランがある
都心の住所を使えるという点も、業種によっては意味を持ちます。名刺や請求書に記載される住所は、取引先が最初に見る情報のひとつです。ただし、これは印象の話であって、事業の中身が伴わなければ意味がありません。会社設立の判断としては、費用と住所の公開を天秤にかけるのが本筋でしょう。
とくに1つ目は、自宅で事業を始める人にとって大きな理由になります。登記事項証明書は誰でも取得できるので、会社設立をすると本店の住所は公開情報になります。

会社設立のおすすめとしては、まずバーチャルオフィスが自分の事業で使えるかどうかを確かめることです。次の章から、確かめるべき点を順に見ていきます。
許認可が必要な業種では使えないことがあります

いちばん注意したいのがここです。許認可が必要な業種のなかには、事務所の実態や面積の要件が定められているものがあります。この場合、バーチャルオフィスでは要件を満たせません。
たとえば人材派遣業では、事務所の面積が20平方メートル以上であることなど、一定の要件を満たす必要があると解説されています。バーチャルオフィスは住所を借りる形なので、こうした要件には対応できません。
事務所の実態を求められることがある業種の例
- ✓人材派遣業(面積などの要件があります)
- ✓建設業(営業所の要件があります)
- ✓不動産業(事務所の形態に要件があります)
- ✓古物商(営業所の実態が求められることがあります)
- ✓士業(それぞれの法律で事務所の要件が定められています)
要件は業種ごとに違い、自治体によって運用が異なることもあります。会社設立の前に、所管の窓口へ直接確認してください。「バーチャルオフィスの住所で許可を取れますか」と聞けば、答えてもらえます。
許認可の要件は、事務所の面積だけとは限りません。専任の管理者を置くこと、独立した区画があること、来客用のスペースがあること。業種によって求められるものが違います。バーチャルオフィスで満たせるかどうかは、要件の中身しだいです。
ここを確かめずに会社設立をしてしまうと、許可が取れないことに後から気づき、本店を移すことになります。本店または支店の移転の登記は、1箇所につき3万円の登録免許税がかかります。これに司法書士の報酬が加わります。

おすすめの順番としては、許認可の確認をいちばん先にすることです。ここで使えないと分かれば、他を調べる必要がなくなります。
許認可を予定していない事業なら、この点は問題になりません。コンサルティング、Web制作、デザイン、ソフトウェア開発などは、バーチャルオフィスで問題なく進められることが多いはずです。
法人口座の審査でどう見られるか

会社設立の直後に必要になるのが法人口座です。バーチャルオフィスを本店にしている場合、審査で説明を求められることがあります。
バーチャルオフィスだから断られると決まっているわけではありません。ただし、金融機関は事業の実態を確認する必要があるため、住所だけでは判断材料が足りないと見られることがあります。
用意しておきたい資料
- 事業の内容が分かるWebサイト(代表者名・連絡先も載せておく)
- 取引先との契約書や発注書
- 発行した請求書や見積書
- 実際に業務を行っている場所の説明(自宅で作業しているなら、そう伝えて構いません)
- バーチャルオフィスの利用契約書
隠すよりも、実態を正直に説明するほうが話は早く進みます。「本店はバーチャルオフィスで、実際の作業は自宅で行っています」と伝えて構いません。事業の中身が説明できれば、それが判断材料になります。
おすすめの伝え方は、聞かれる前に説明してしまうことです。申し込みの備考欄や、電話での確認のときに「本店はバーチャルオフィスで、実際の業務は自宅で行っています」と先に伝える。隠していると思われるより、はるかに印象がよくなります。
金融機関によって扱いが違うので、複数に申し込むという方法もあります。1行に絞って待っていると、断られたときに時間を失います。会社設立の直後は資金の動きが出るので、口座がないと事業が回りません。
なお、口座の審査は住所だけで決まるものではありません。事業の内容、事業目的の書き方、代表者の説明。総合的に判断されます。バーチャルオフィスであることは、判断材料のひとつにすぎません。
バーチャルオフィスのなかには、法人口座の開設実績を公表しているところもあります。選ぶときの材料のひとつとして見ておくとよいでしょう。
出典金融庁「金融庁」
取引先からの見え方

本店の住所は登記事項として公開されるので、取引先が調べれば分かります。バーチャルオフィスの住所は、検索すると同じ住所の会社が多数出てくることがあります。
おすすめの確かめ方は、想定している取引先に住所を気にする相手がいるかどうかを考えてみることです。心当たりがなければ、気にしすぎる必要はありません。
実際のところ、形態や住所より事業の中身と実績が見られるのが多くの場面です。ただし、会社設立の直後は実績がないので、住所が判断材料のひとつになりやすいのも事実です。
気になる場合は、事業が育ってから本店を移すという選択もあります。ただし移転には登記が必要で、費用がかかります。最初から移す前提なら、その費用も見込んでおいてください。
なお、定款の本店の記載を最小行政区画(市区町村)までにしておくと、同じ市区町村内での移転では定款の変更が不要になります。バーチャルオフィスから同じ区内のオフィスに移る場合に効きます。会社設立の相談のときに、この書き方にできるか聞いてみてください。
おすすめの考え方としては、当面の事業に支障がなければバーチャルオフィスで始めて構いません。必要になったときに移せばよいものです。
出典法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」
郵便物の扱いを確かめる

見落としやすいのが郵便物です。会社設立をすると、税務署、年金事務所、法務局、金融機関から書類が届きます。これらを確実に受け取れるかどうかは、実務でかなり重要です。
郵便物について確かめること
- 転送の頻度(週1回か、月1回か、都度か)
- 転送の費用(基本料金に含まれるか、別料金か)
- 到着の通知があるか(メールやアプリで知らせてくれるか)
- 本人限定受取郵便を受け取れるか
- 宅配便を受け取れるか
4つ目に注意してください。本人限定受取郵便は、名宛人本人でないと受け取れません。金融機関からの重要書類がこの形で送られることがあり、バーチャルオフィスでは受け取れないことがあります。契約前に確認しておいてください。
転送の頻度も実務に効きます。月1回の転送だと、税務署からの通知が届くのが3週間後になることがあります。期限のある書類だと、これは危険です。会社設立の直後は届く書類が多いので、頻度の高いプランを選ぶ意味があります。
到着の通知があるかどうかも見ておいてください。届いたことが分かれば、急ぎのものは取りに行くという判断ができます。通知がないと、転送されるまで気づけません。
実務でおすすめしたいのは、重要な書類の送付先を分けることです。税務署や年金事務所への届出のときに、送付先として別の住所を指定できる場合があります。本店はバーチャルオフィスにしつつ、書類は自宅に届くようにするという使い分けです。可否は各機関に確認してください。
料金の安いプランは、郵便の転送が別料金だったり、頻度が低かったりすることがあります。基本料金の安さだけで選ばず、必要なオプションを含めた総額で比較してください。
本店をどこにするか含めて相談したい方は、無料の相談から始めてみてください。
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自宅を本店にする場合との比較

バーチャルオフィスを検討する前に、自宅を本店にする選択肢とも比べておきましょう。

自宅を本店にする場合の注意点は2つです。ひとつは、賃貸住宅の場合に契約で事業利用が禁じられていることがあること。もうひとつは、自宅の住所が登記事項として公開されることです。
賃貸の契約については、大家さんや管理会社に確認してから決めてください。後から問題になると、本店を移すことになります。持ち家なら、この問題は起きません。
住所の公開については、人によって受け止め方が違います。気にならない人にとっては、自宅を本店にするのがいちばん安く確実です。費用がかからず、郵便物も確実に届きます。
費用の面でも比べておきます。バーチャルオフィスは月額数百円から数千円ですが、年額にすると数千円から数万円です。自宅なら0円。この差を、住所を公開しないことの対価と考えられるかどうかで判断が分かれます。
会社設立のおすすめとしては、この2点を確かめてから決めることです。どちらも問題ないなら、自宅で始めて構いません。
よくある質問

バーチャルオフィスを解約したらどうなりますか
その住所を本店として使えなくなるので、本店移転の登記が必要になります。登録免許税は1箇所につき3万円です。これに司法書士の報酬が加わります。解約の予定があるなら、この費用も見込んでおいてください。
同じ住所に他の会社もあって大丈夫ですか
登記の手続き上は問題ありません。ただし、同一の本店所在地に同一の商号がある場合は登記できません。会社設立の前に、その住所に同じ商号の会社がないかを確認してください。バーチャルオフィスの事業者に聞けば分かることもあります。
事業者が倒産したりサービスを終了したりしたらどうなりますか
本店を移す必要が出てきます。この場合も移転の登記が必要です。料金の安さだけで選ばず、運営の実績も見ておくことをおすすめします。会社設立の本店は、会社が続くかぎり付き合う住所です。
バーチャルオフィスの費用は経費にできますか
事業のための支出であれば経費になります。会社設立の前に契約した分については、創立費または開業費として扱える場合があります。領収書は忘れずに保管しておいてください。処理の判断は税理士にご確認ください。
出典国税庁「法人税基本通達 第1節 繰延資産の意義及び範囲等」
まとめ|使えるかどうかを先に確かめる

バーチャルオフィスの住所は法人登記に使えます。ただし、使う前に確かめておきたい点がいくつかあります。
この記事で押さえたこと
- ✓登記の手続き上、バーチャルオフィスの住所が拒まれることはないのが通常。
- ✓許認可が必要な業種では、事務所の実態や面積の要件で使えないことがある。
- ✓法人口座の審査では、事業の実態を示す資料を余計に用意しておく。
- ✓郵便物の転送頻度と、本人限定受取郵便の扱いを契約前に確認する。
- ✓解約や事業者の撤退があれば、本店移転の登記に1箇所3万円かかる。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。許認可の要件は業種と自治体によって異なりますので、実際の判断の前に所管の窓口へご確認ください。登記に関する点は司法書士にご相談ください。
使えるかどうかを、先に確かめてください
バーチャルオフィスは便利な選択肢ですが、業種によっては使えません。許認可が必要な事業を予定しているなら、会社設立の前に所管の窓口へ確認してください。あとから本店を移すと、変更登記の費用がかかります。
法人口座の開設についても、事前に確認しておくと安心です。バーチャルオフィスだから断られると決まっているわけではありませんが、事業の実態を示す資料を余計に用意しておく必要があります。
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他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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