この記事は「会社設立をすると社会保険がどうなるのか」を知りたい人に向けたものです
個人事業から法人にすると、社会保険の扱いが変わります。法人の事業所は、代表者一人だけであっても強制適用の対象になります。選べるものではありません。
日本年金機構の案内によると、健康保険・厚生年金保険の新規適用届の提出期限は事実発生から5日以内とされています。会社設立後の手続きのなかで、いちばん期限が短いところです。
この記事では、加入の義務、手続きの中身、役員報酬との関係、そして負担の考え方を整理します。法人化を迷っている段階の方にも役に立つはずです。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
法人は代表者一人でも加入します

まず押さえるべきなのが、加入は義務だという点です。会社設立をした時点で、社会保険の適用を受ける立場になります。
日本年金機構の案内によると、国・地方公共団体または法人の事業所は、常時従業員を使用する場合に強制適用事業所となるとされています。代表者一人だけの会社でも、この対象です。
ここでいう「常時従業員を使用する」には、代表者自身が報酬を受けている場合も含まれるという整理がされています。従業員を雇っていないから対象外、とはならないところに注意してください。
個人事業では、業種と人数によって扱いが変わりました。法人にすると、この区別がなくなります。ここが、法人化で大きく変わるところのひとつです。
法人になると変わること
- 国民健康保険から健康保険(協会けんぽなど)に切り替わる
- 国民年金から厚生年金保険に切り替わる
- 保険料を会社と本人で分担する(会社負担分が発生する)
- 保険料は毎月納付する
- 扶養の制度が使えるようになる
厚生年金は、国民年金に上乗せされる部分があります。同じ保険料を払うにしても、将来受け取る年金の設計が変わるということです。負担が増える一方で、受け取る側の仕組みも変わります。
5つ目は見落とされがちな利点です。健康保険には被扶養者の制度があり、要件を満たす家族は保険料の負担なく加入できるとされています。国民健康保険には、この仕組みがありません。

この比較表のとおり、法人化すると仕組みそのものが変わります。会社設立のおすすめの見方としては、負担額だけでなく扶養の制度や給付の違いまで含めて比較することです。
会社設立のおすすめの準備としては、この切り替えを見込んで資金計画を立てることです。負担額を知らずに法人化すると、あとで驚くことになります。
手続きと必要書類

手続きは年金事務所で行います。管轄は本店所在地によって決まります。

期限が5日以内と短いので、登記が完了する前から準備しておくのが現実的です。様式は日本年金機構の公式サイトからダウンロードできます。
書類の書き方が分からないときは、管轄の年金事務所に電話で聞くこともできます。窓口で相談しながら記入する方法もあります。無理に自分だけで完結させようとしなくて構いません。
提出は窓口・郵送のほか、電子申請でもできます。GビズIDを取得しておけば、電子申請が使えます。会社設立の直後は動くことが多いので、電子申請を使えるようにしておくと楽です。
事業所の名称と所在地、事業の種類、代表者の情報などを書きます。登記の内容と食い違わないように、登記事項証明書を手元に置いて記入してください。
添付書類としては、登記事項証明書を求められるのが一般的です。ここでも、複数通取っておいたことが役に立ちます。
会社設立の代行サービスを比較するとき、この社会保険の手続きまで含まれるかどうかも確認してください。設立の登記だけを扱うところと、設立後の労務まで見るところがあります。おすすめできる相手は、そこで変わります。
手続きが完了すると、健康保険証(または資格確認のための情報)が交付されます。それまでの間の受診については、年金事務所にご確認ください。
役員報酬と保険料の関係

保険料は、報酬の額をもとに決まります。役員報酬をいくらにするかが、そのまま保険料に効いてきます。
日本年金機構の案内によると、保険料は標準報酬月額と標準賞与額に保険料率を掛けて計算し、事業主と被保険者が半分ずつ負担するとされています。
つまり、会社としては報酬の額に加えて、その分の保険料の会社負担分も払うことになります。人件費を計算するときは、この点を忘れないでください。
役員報酬を決めるときに考えること
- 報酬が高いほど社会保険料も高くなる
- 会社負担分もあるので、会社の支出は報酬額より大きくなる
- 報酬を低くすると、将来の年金額にも影響する
- 報酬は会計期間開始から3か月以内に決める必要がある(定期同額給与)
- 一度決めると、期の途中で自由に変えられない
4つ目と5つ目は税務の話ですが、社会保険と切り離せません。国税庁の案内によると、定期同額給与として損金に算入するには要件があります。会社設立の初年度は、設立から3か月以内に決めることになります。
報酬を低く抑えて保険料を減らすという考え方もありますが、将来の年金額や、傷病手当金などの給付の額にも影響します。目先の負担だけで決めないでください。
役員報酬をゼロにすれば社会保険には加入しないという整理になりますが、その場合は健康保険と年金を自分で用意する必要があります。会社設立のおすすめの判断としては、年金事務所と税理士の両方に確認してから決めることです。
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国民健康保険からの切り替え

個人事業から法人にした場合、国民健康保険と国民年金から切り替わります。この切り替えにも手続きが要ります。
健康保険証が届いたら、市区町村の窓口で国民健康保険の資格喪失の手続きをします。これをしないと、国民健康保険の保険料が請求され続けることがあります。
国民年金については、厚生年金保険の資格取得届を出すことで切り替わるのが基本の流れです。配偶者を扶養する場合は、第3号被保険者の届出も必要です。
国民健康保険の喪失手続きには、新しい健康保険の資格を確認できるものが必要になります。市区町村によって必要書類が違うので、行く前に確認しておいてください。
切り替えのタイミングによっては、保険料が二重に請求されたように見えることがあります。あとで精算されるのが通常ですが、心配なら市区町村と年金事務所に確認してください。
切り替えのタイミングを比較すると、健康保険証が届いてから喪失手続きをするほうが安全です。おすすめの順番はこれです。
なお、法人化しても個人事業を続ける場合は、扱いが複雑になります。会社設立と個人事業を並行する予定なら、事前に相談しておくことをおすすめします。
会社設立のおすすめの手順としては、健康保険証が手元に届いてから国民健康保険の喪失手続きをすることです。先に喪失すると、保険証がない期間ができてしまいます。
毎月・毎年やること

加入して終わりではありません。毎月の納付と、年に一度の届出があります。
2つ目の算定基礎届は、毎年やってくる手続きです。年間の予定に入れておいてください。
納入告知書は毎月届きます。口座振替にしておけば、払い忘れを防げます。会社設立の直後に設定しておくとよいでしょう。
保険料の納付を滞納すると、延滞金がかかることがあります。資金繰りの計画に、毎月の保険料を忘れずに入れておいてください。会社設立の直後は資金が薄いので、ここでつまずくことがあります。
4つ目の賞与支払届は、賞与を出さない年でも「不支給」の報告を求められることがあります。届出の要否は年金事務所にご確認ください。
人を雇うようになると、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きも加わります。窓口が労働基準監督署とハローワークに分かれるので、さらに手間が増えます。
会社設立の直後は、こうした定期的な手続きの存在自体を知らないことが多いところです。年間の予定表を作って、そこに書き込んでおくことをおすすめします。
こうした実務が負担になるようなら、社会保険労務士に依頼する道もあります。会社設立の代行サービスのなかにも、設立後の労務まで見てくれるところがあります。比較して選んでください。
負担額をどう見積もるか

保険料の料率は、健康保険は都道府県ごとに、厚生年金保険は全国一律で定められています。料率は改定されるので、具体的な数字はここには書きません。
見積もりのしかたは単純です。予定している役員報酬の額をもとに、日本年金機構が公表している保険料額表で該当する金額を見ます。そこに会社負担分を加えたものが、会社の支出です。
見積もるときの注意
- 会社負担分と本人負担分の両方を計算する
- 健康保険の料率は都道府県によって違う
- 40歳以上は介護保険料も加わる
- 料率は改定されるので、最新の表を使う
- 賞与を出す予定があれば、その分も見込む
保険料額表は、標準報酬月額の等級ごとに金額が並んだ表です。自分の報酬額がどの等級に入るかを見れば、月額の保険料が分かります。日本年金機構の公式サイトで公表されています。
3つ目の介護保険料は見落としがちです。40歳になった月から負担が加わります。年齢によって金額が変わるということです。
個人事業のときの国民健康保険料・国民年金保険料と比較して、どれくらい変わるかを計算しておくと、法人化の判断がしやすくなります。会社設立のおすすめの準備としては、この比較を数字で出しておくことです。
5つ目の賞与についても、標準賞与額をもとに保険料がかかります。役員に賞与を出す場合は、税務の扱い(事前確定届出給与)とあわせて確認してください。
ただし、負担だけを見るのは片手落ちです。厚生年金は国民年金に上乗せされる部分があり、健康保険には傷病手当金や出産手当金といった給付があります。両方を見て判断してください。
よくある質問

役員報酬をゼロにすれば加入しなくていいですか
報酬がない場合は被保険者にならないという整理になりますが、事業所としての適用の扱いは別に確認が必要です。判断は年金事務所にご確認ください。なお、その場合は健康保険と年金を自分で用意することになります。
会社員をしながら会社設立をした場合はどうなりますか
勤務先で社会保険に加入していて、自分の会社からも報酬を受ける場合は、二以上事業所勤務の届出が必要になることがあります。扱いが複雑なので、年金事務所に確認してください。
なお、勤務先に会社設立のことを知られたくないという相談もありますが、社会保険の手続きの都合上、隠し通せるとは限りません。就業規則も含めて確認しておいてください。
家族を扶養に入れられますか
健康保険には被扶養者の制度があります。収入などの要件を満たす家族は、保険料の負担なく加入できるとされています。要件は協会けんぽや加入する健康保険組合の案内でご確認ください。
手続きを忘れていました
気づいた時点で年金事務所に連絡してください。正当な理由なく届出をしない場合には罰則の規定があるとされています。放置せず、早めに相談することをおすすめします。
まとめ|義務であり、期限は5日です

法人の事業所は、代表者一人でも社会保険の強制適用の対象になります。加入するかどうかを選ぶ余地はありません。
この記事で押さえたこと
- 法人は代表者一人でも強制適用事業所になる。
- 新規適用届の期限は事実発生から5日以内。
- 保険料は標準報酬月額をもとに計算し、会社と本人で分担する。
- 国民健康保険の資格喪失手続きは、健康保険証が届いてから市区町村で行う。
- 毎月の納付と、年に一度の算定基礎届がある。
- 負担は増えるが、傷病手当金や厚生年金の上乗せといった保障もある。
制度と期限は2026年8月時点で確認できたものです。料率と要件は改定されますので、実際の手続きの前に日本年金機構と協会けんぽの案内をご確認ください。個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。
負担は増えますが、その分の保障もあります
社会保険料は、会社と本人で分担します。会社負担分があるので、個人事業のときより負担は増えるのが一般的です。この点は、法人化を判断するときの材料になります。
一方で、厚生年金は国民年金に上乗せされる部分があり、健康保険には傷病手当金などの給付があります。負担と保障の両方を見て考えてください。
料率と要件は変わります。実際の手続きの前に、日本年金機構と協会けんぽの案内で最新の内容をご確認ください。判断に迷うところは、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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