この記事は「会社設立に使ったお金の領収書を、どう処理すればよいか分からない」人のために書きました
会社設立には、登録免許税や定款認証の手数料のほかにも、細かい出費が積み重なります。印鑑の作成代、名刺、打ち合わせの交通費、開業前に借りた事務所の家賃。これらは会社ができる前に払ったお金なので、そのままでは会社の帳簿に載りません。
そこで用意されているのが、創立費と開業費という考え方です。会社設立の前後にかかった費用を会社の費用として計上できる仕組みで、どちらも繰延資産として扱えます。使い方を知っておくと、利益が出た年に償却するといった調整もできます。
この記事では、創立費と開業費の線引き、繰延資産としての扱い、そして実務での注意点を整理します。会社設立の費用を無駄にしないためのおすすめの考え方として、読んでみてください。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
会社ができる前に払ったお金も、費用にできます

会社設立の準備には、登記までにいろいろな出費があります。会社がまだ存在していない時点で払ったお金なので、普通に考えれば会社の費用にはできません。ところが、次の2つの枠を使えば計上できます。
境目は会社が成立した日(登記申請の日)です。それより前が創立費、それより後で営業開始前が開業費、というのが基本の考え方になります。会社設立のおすすめの実務としては、領収書を日付順に並べて、この線で分けるのが分かりやすいでしょう。
この2つを比較すると、創立費のほうが範囲がはっきりしています。登記までにかかったお金は、ほぼそのまま創立費に入れられるからです。開業費のほうは「特別に支出した」という条件が付くぶん、判断が要ります。会社設立の直後は、まずこの違いだけ押さえておけば十分でしょう。
どちらに入れるか迷ったら
厳密に分けきれない支出もあります。実務では、設立の手続きに直接かかったものを創立費、事業を始めるための準備にかかったものを開業費とするのが一般的です。金額の大きいものは税理士に確認しておくと安心です。
出典国税庁「法人税基本通達 第1節 繰延資産の意義及び範囲等」
創立費に入るものを具体的に見る

創立費は、会社を設立するために必要だった費用です。会社設立の比較記事でよく出てくる法定費用は、ほとんどここに入ります。
創立費に入る主なもの
- 定款の作成にかかった費用(作成代行の報酬を含む)
- 定款認証の手数料と、謄本の交付手数料
- 設立登記の登録免許税
- 司法書士・行政書士への報酬
- 設立の打ち合わせにかかった交通費や通信費
- 会社の印鑑を作った費用
定款に会社が負担する旨を定めていない設立費用は、創立費に当たると整理されています。実務では、設立の手続きに関わる領収書はまとめて創立費に入れるという扱いが分かりやすいでしょう。
ここで挙げた項目を、会社設立の費用の比較記事で出てくる金額と照らしてみてください。登録免許税15万円、定款認証の手数料、司法書士への報酬。比較表に載っている金額の多くは、そのまま創立費になります。つまり、設立費用を比較して選んだその金額は、あとで費用として使える性質のものだということです。

出典国税庁「法人税基本通達 第1節 繰延資産の意義及び範囲等」
開業費に入るものを具体的に見る

開業費は、会社ができてから実際に営業を始めるまでの間に、開業の準備のために特別に支出した費用です。「特別に」という言葉が入っている点が大事で、経常的にかかる費用は含みません。
この線引きは判断が分かれるところなので、金額の大きいものは税理士に確認するのがおすすめです。会社設立の直後は判断の材料が少ないので、迷ったら聞いてしまうほうが早いでしょう。
創立費と開業費を比較すると、開業費のほうが金額が読みにくい傾向があります。広告宣伝費や研修費は、事業の内容によって大きく変わるからです。会社設立の準備を始める段階で、開業までにかかりそうな費用を書き出しておくのがおすすめです。資金繰りの見通しにもなりますし、あとで領収書を探す手間も減ります。
個人事業から法人化した場合は、個人時代の資産や費用の扱いも整理が必要になります。この場合はとくに、税理士に相談することをおすすめします。
繰延資産として、好きなタイミングで償却できます

創立費と開業費のおもしろいところは、支出した年度に全額を費用にしなくてもよい点です。いったん繰延資産として計上しておき、あとから償却できます。
会計上は5年間の均等償却が原則とされていますが、税務上の繰延資産としては任意償却が認められていると解説されています。つまり、好きな年に好きな額だけ償却できるということです。

設立1期目は赤字になることが多いので、そこで全額を費用にしてしまうと、せっかくの費用が活きません。利益が出るまで取っておくという選択ができるのが、繰延資産の利点です。会社設立の費用を無駄にしないという意味で、これはおすすめの考え方です。
一括で費用にする場合と、繰延資産にして少しずつ償却する場合を比較すると、どちらが得かはその年の利益で決まります。設立1期目から黒字が見込めるなら一括のほうが分かりやすく、赤字が続きそうなら繰延資産にしておくほうが有利になります。おすすめの判断としては、1期目の決算の見通しが立った時点で税理士に相談するのが確実です。
会計ソフトを使っていれば、繰延資産の残高は貸借対照表にそのまま出てきます。毎期の決算のときにその数字を見て、今年は償却するかどうかを判断する。この習慣をつけておけば、使い忘れることはありません。
ただし、放っておくと忘れます
繰延資産として計上したまま何年も経つと、その存在を忘れてしまうことがあります。会計ソフトに残高として残っているはずなので、決算のたびに確認してください。使い忘れた創立費は、ただの数字として貸借対照表に残り続けます。
仕訳のときに困りやすいところ

実際に帳簿に載せるときに、迷いやすいところを挙げます。会計ソフトを使っていても、最初の入力は自分で判断する必要があります。
迷いやすい3つ
- 発起人が立て替えた費用:会社ができる前は発起人の個人のお金で払うことになります。設立後に会社から発起人へ精算する形にして、その記録を残してください。
- 資本金から払った費用:資本金の払込みは会社の元手であって、費用の支払いとは別です。混同すると資本金の額が合わなくなります。
- 消費税の扱い:登録免許税や定款認証の手数料は消費税の課税対象外です。一方、司法書士の報酬や印鑑の作成費には消費税がかかります。
このあたりは、会計ソフトを入れておくと迷いが減ります。勘定科目の候補を出してくれますし、消費税の区分も初期設定で入っています。会社設立の直後にソフトを入れるかどうか迷っている人には、この点でもおすすめできます。
| サービス | 代行手数料 | 利用条件 | 対応範囲 |
|---|---|---|---|
| freee会社設立 freee株式会社/クラウドツール | 利用料金0円 | 電子定款費用の負担を受けるにはfreee会計の年間契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
| マネーフォワード クラウド会社設立 株式会社マネーフォワード/クラウドツール | サービス利用料0円 | 電子定款を無料にするには有料プラン(ひとり法人・スモールビジネス・ビジネス)の契約が必要 | 設立書類の作成と、設立後のクラウドサービス連携 |
| 弥生のかんたん会社設立 弥生株式会社/クラウドツール | 登録および書類作成は無料 | 登記まで一貫して同サービスを使う必要がある。途中からの利用は不可。株式会社・合同会社のみ | 設立書類の作成と、設立後の会計ソフト連携 |
領収書はいつから取っておけばよいか

実務でいちばんもったいないのは、領収書を捨ててしまっているケースです。創立費に入れられたはずの支出が、証拠がないために費用にできません。
設立前から取っておきたいもの
- 会社設立に関わる支払いの領収書すべて
- 交通費の記録(日付・区間・金額・目的)
- 打ち合わせの飲食代の領収書(誰と何のために、をメモしておく)
- 書籍やセミナーの領収書(設立準備のためのもの)
- 印鑑・名刺・ロゴなどの制作費の領収書
会社設立を思い立った時点で封筒をひとつ用意し、関係しそうな領収書を全部そこに入れる。これだけで、あとから困りません。入るかどうかの判断は、税理士に見てもらえば済みます。捨ててしまったものは戻りません。
なお、領収書の保存には期間の定めがあります。法人は帳簿書類を一定期間保存する義務があるので、会社設立の年の書類はとくに大切に取っておいてください。電子データで受け取ったものは、電子帳簿保存法の要件に沿った形で保存する必要があります。会計ソフトを比較して選ぶときは、この保存の機能があるかどうかも見ておくとよいでしょう。
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よくある質問

創立費に金額の上限はありますか
上限が決まっているという性質のものではありません。ただし、会社設立に必要だったと説明できる範囲であることが前提です。関係のない支出を入れると、税務調査で否認される可能性があります。「なぜこれが会社設立に必要だったか」を説明できるかどうかを基準にしてください。
資本金から設立費用を払ってもよいのですか
資本金は会社の元手であり、払込みが済んだあとは会社の口座のお金です。そこから設立費用を払うこと自体は問題ありませんが、払込みの証明を取る前後で口座を動かすと、資本金の払込みを証明しにくくなります。順番に気をつけてください。
個人事業から法人化した場合はどうなりますか
法人としての創立費・開業費は、法人設立に関わる部分だけが対象です。個人事業時代の費用は個人の確定申告で処理します。資産の引き継ぎ方によっては課税関係が生じることもあるので、この場合はとくに税理士に相談することをおすすめします。
会社設立を代行に頼んだ場合、その報酬も創立費になりますか
設立の手続きのために支払った報酬であれば、創立費に入ります。司法書士や行政書士への報酬、クラウドサービスの利用料、電子定款の作成代行費用などが該当します。会社設立のおすすめを比較して選んだサービスに払ったお金は、そのまま費用として使えるということです。領収書や請求書は忘れずに保管しておいてください。
繰延資産にせず、その年に全部費用にしてもよいですか
構いません。利益が出ている年なら、そのほうが分かりやすいでしょう。逆に1期目が赤字なら、繰延資産にしておいて利益が出た年に償却するほうが有利になることがあります。どちらがおすすめかは、その年の見通し次第です。決算の前に税理士に相談してください。
まとめ|払ったお金を、きちんと費用にする

会社設立にかかった費用は、創立費または開業費として計上できます。繰延資産にしておけば、利益が出た年に償却するという調整もできます。
この記事で押さえたこと
- 会社が成立した日を境に、それより前が創立費、後で営業開始前が開業費。
- 創立費には、定款の費用・登録免許税・士業への報酬・印鑑代などが入る。
- 開業費は「特別に支出した」費用が対象。経常的な家賃などは入りにくい。
- 繰延資産にしておけば、任意のタイミングで償却できると解説されている。
- いちばん大事なのは、思い立った時点から領収書を取っておくこと。
ここで扱った制度の内容は2026年8月時点で確認できたものです。税務の取扱いは個別の事情で変わりますので、実際の処理は税理士にご確認ください。国税庁の通達や解説もあわせてご覧いただくと確実です。
領収書を捨てないことが、いちばんの節約になります
この記事でお伝えしたかったのは、実は難しい会計処理の話ではありません。会社設立の前に払った領収書を、きちんと取っておいてくださいということです。処理の仕方は税理士に相談すれば決まりますが、領収書がなければどうにもなりません。
会社設立の費用を安くする方法はいくつもありますが、すでに払ったお金を正しく費用にすることも、立派な節約です。おすすめの進め方は、設立を思い立った時点から領収書用の封筒をひとつ用意して、そこに入れていくことです。
処理の判断に迷ったら、決算の前に税理士に相談してください。繰延資産にするか一括で費用にするかは、その年の利益の見通しによって変わります。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
この記事のキーワードに「会社設立 おすすめ 比較」を足して検索したときに実際に出てきたサイトです。掲載の順番は優劣を示すものではありません。内容は各サイトの公開時点のものなので、料金や条件は、リンク先で最新の表示をご確認ください。
- マネーフォワード|創立費と開業費の会計処理
繰延資産としての扱いと償却をまとめています。
biz.moneyforward.com - freee|会社設立の費用はいくら?維持費までわかりやすく解説
設立時だけでなく設立後の維持費まで扱っています。
freee.co.jp - タケバ会計事務所|会社設立の経費はどこまで認められる?
開業費と創立費の線引きを解説しています。
takeba-kaikei.com - ベンチャーサポート|会社設立前のコストは経費になる?
創立費と開業費の仕訳を税理士が解説しています。
vs-group.jp - 弥生|創立費とは?開業費との違いや仕訳方法
創立費と開業費の違いを整理しています。
yayoi-kk.co.jp - freee|会社設立時の費用は経費になる?仕訳方法も解説
設立費用の経費処理と仕訳の考え方をまとめています。
freee.co.jp - 税理士法人オンデック|会社設立時にクラウド会計は導入すべき?
クラウド会計を設立時に入れる是非を検討しています。
stamen.jp - 弥生|税理士には会社設立前に相談?起業相談のメリットと費用相場
設立前に相談する利点を整理しています。
yayoi-kk.co.jp - ベンチャーサポート|会社設立後のやることリスト
登記後の書類と手続きを順に確認できます。
vs-group.jp - サン共同税理士法人|会社設立にかかる費用はどのくらい?
税理士事務所による費用の解説。株式会社と合同会社の違いも扱います。
tax-startup.jp - マネーフォワード|会社設立の相談は司法書士にすべき?
費用相場・選び方・税理士との違いを扱っています。
biz.moneyforward.com - リーパル会計事務所|会社設立の費用総額はいくら?
税理士監修で会社形態別に総額を解説しています。
leapal.jp - 小谷野税理士法人|会社設立の代行費用の比較
代行費用を比較し、格安サービスを紹介しています。
koyano-cpa.gr.jp - ビジネスコンシェルジュ|安い会計ソフトおすすめ12選を比較
料金相場と買い切り製品まで含めた比較です。
onamae.com - Financial Advisory Services|会計ソフトおすすめ比較
公認会計士・税理士による解説記事です。
financial-advisory.co.jp - マネーフォワード|会社設立の登録免許税はいくら?計算方法
半額に軽減するための条件も説明しています。
biz.moneyforward.com - SoVa|株式会社と合同会社の設立費用の違い
設立時と設立後の両方の費用を会社形態で比べています。
sovagroup.co.jp - 小谷野税理士法人|会社設立の税理士費用はいくら?相場とメリット
税理士法人に依頼した場合の費用相場をまとめています。
koyano-cpa.gr.jp - 税理士コラボネット|freee・マネーフォワード・弥生 比較(法人)
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collabonet.org - 国税庁|No.5759 法人税の税率
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nta.go.jp





