この記事は「資本金をいくらにすればいいのか、まったく見当がつかない」人に向けたものです
会社設立の準備で、資本金の額を決める場面が来ます。法律上は1円から設定できるので、いくらでもよいことになっています。ところが実際には、金額によって税金の扱いや手続きの費用が変わります。自由だからこそ、決め方が難しいところです。
押さえておきたい線は2つです。1,000万円と100万円。1,000万円以上にすると設立1期目から消費税の納税義務が生じ、100万円未満なら定款認証の手数料が下がる可能性があります。この2つを知っているだけで、判断がかなり楽になります。
この記事では、金額で変わることを整理し、運転資金から逆算する決め方を示します。会社設立の準備として、この記事を見ながら自分の数字を当てはめてみてください。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
資本金は1円から設定できます

会社法には、資本金の最低額の定めがありません。理論上は1円で会社設立ができます。実際に、資本金1円の会社も存在します。
ただし、1円が良い選択かというと、そうではありません。資本金は会社の元手であり、当面の運転資金でもあります。1円では、家賃も仕入れも役員報酬も払えません。
また、資本金は登記事項として公開されます。取引先や金融機関が見る数字なので、あまりに小さいと事業の規模を疑われることがあります。法人口座の開設でも、判断材料のひとつになります。
では、いくらにするのがよいのか。実務的には、必要な運転資金から逆算する方法が使われます。初期費用と、数か月分の運転資金を合計する。この考え方が、いちばん納得しやすいでしょう。
平均額として紹介されている水準を見ると、300万円から500万円未満が最も多いという調査結果があると解説されています。ただし、これは業種も規模もさまざまな会社を含めた数字です。平均に合わせる必要はありません。
平均額と自分の必要額を比較してみると、業種によって大きくずれることが分かります。設備の要る製造業と、パソコン1台で始められるコンサルティングでは、必要な元手がまったく違います。おすすめの見方としては、平均は参考程度にとどめ、自分の事業計画から出した数字を信じることです。
会社設立のおすすめの決め方としては、平均を気にするより、自分の事業に必要な額を計算することです。次の章から、金額で変わることを見ていきます。
1,000万円の線|消費税の扱いが変わります

資本金でいちばん大きく影響するのがこの線です。国税庁の案内によると、事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上である新設法人は、消費税の納税義務の免除を受けられません。
逆に、1,000万円未満であれば、基準期間がないため設立1期目と2期目は免除の対象になりうるとされています。ただし、特定新規設立法人に該当する場合など、他の要件でも扱いが変わります。

見栄えのために1,000万円にすると、この扱いを受けることになります。売上の規模によっては、消費税の負担は決して小さくありません。会社設立の直後で資金が限られる時期に、この負担が乗るのは厳しいところです。
法人税の税率にも資本金が関わります。国税庁の案内によると、資本金1億円以下の法人などについては、年800万円以下の部分に軽減された税率が適用されるとされています。会社設立の直後の規模であれば、この区分に当てはまることがほとんどです。おすすめとしては、1億円という線は当面気にしなくてよいと考えてください。
また、法人住民税の均等割も資本金の額によって区分が変わります。赤字でも毎年かかるお金なので、この差も長い目では効いてきます。金額は自治体によって違うので、本店を置く自治体の案内で確認してください。
消費税の免除は、売上の規模によっては大きな金額になります。仮に年間の課税売上が1,000万円あるとすると、その消費税分がまるまる残るかどうかの違いです。会社設立の1期目と2期目という、いちばん資金が苦しい時期にこの差が出ます。比較してみれば、1,000万円未満にする意味は明らかでしょう。
会社設立のおすすめとしては、特別な理由がなければ1,000万円未満にすることです。許認可の要件で1,000万円以上が必要といった事情があれば別ですが、そうでなければこの線を超える意味は薄いでしょう。
100万円の線|定款認証の手数料が変わります

もうひとつの線が100万円です。株式会社の定款認証の手数料は、資本金の額によって変わります。

さらに、2024年12月1日から特例ができました。資本金の額等が100万円未満で、発起人の全員が自然人かつ3人以下、発起設立、取締役会を置かない場合は1万5,000円になります。
一人で会社設立をする場合、資本金以外の要件は自然と満たしていることが多いはずです。残るのは、資本金を100万円未満にするかどうかだけです。
ただし、1万5,000円のために事業の見通しを歪めるのはおすすめしません。100万円で運転資金が足りるならよいのですが、足りないなら意味がありません。あくまで、100万円未満で問題ない場合の話です。
100万円未満にするかどうかを比較するときは、運転資金が足りるかどうかを先に見てください。1万5,000円を浮かせるために運転資金を削ると、数か月後に資金が尽きます。おすすめの順番は、必要額を出してから線を意識することです。逆にしてはいけません。
なお、この線は株式会社の話です。合同会社には定款認証の手続きそのものがないので、関係ありません。会社設立の費用を比較するとき、この違いも押さえておいてください。
運転資金から逆算する

線を押さえたら、次は金額そのものです。実務では、初期費用と数か月分の運転資金を合計する方法が使われます。
逆算の手順
- 事業を始めるのに必要な初期費用を書き出す(設備、内装、仕入れ、ソフトの契約など)。
- 毎月の固定費を書き出す(家賃、通信費、役員報酬、社会保険料など)。
- 売上が立つまでの期間を見積もる(3か月か、6か月か)。
- 初期費用+(月の固定費×その期間)を計算する。
- その金額を、1,000万円と100万円の線と照らして調整する。
3つ目の期間の見積もりが肝心です。売上が立つまでの期間を短く見積もると、資金が尽きます。会社設立の直後は、想定より時間がかかるものだと考えておいてください。3か月から6か月分を見るのが一般的です。

この例だと250万円になります。1,000万円の線は超えていないので、消費税の扱いは問題ありません。100万円は超えているので、定款認証は4万円の区分になります。この差1万円と、運転資金の余裕を天秤にかけることになります。
この計算をするときにおすすめなのが、悲観的な見積もりを1つ作っておくことです。売上が想定の半分だった場合、資金はいつまで持つか。会社設立の直後は思いどおりにいかないことが多いので、この余裕が効いてきます。
なお、資本金は会社の口座に入るお金なので、外に出ていくわけではありません。あくまで元手です。この点を混同しないでください。
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許認可の要件を確かめる

業種によっては、許認可の要件として資本金や純資産の額が定められていることがあります。この場合、その金額を満たす必要があります。
要件がある業種では、運転資金の計算より先に、許認可の要件を確かめてください。あとから資本金を増やすには増資の手続きが必要で、登録免許税もかかります。
増資の登記にかかる登録免許税は、増加した資本金の額の1,000分の7で、3万円に満たないときは3万円とされています。会社設立のときに満たしておけば、この費用はかかりません。
確かめる手順
- 自分の事業に許認可が必要かどうかを調べる
- 必要なら、その許認可の要件を所管の窓口で確認する
- 資本金や純資産の額の要件があるかを確認する
- 要件があれば、その金額を満たすように資本金を決める
許認可の要件を満たすためだけに資本金を大きくする場合、消費税や均等割の負担も一緒に増えます。おすすめの進め方は、要件ぎりぎりの金額にして、余計に増やさないことです。
所管の窓口は業種によって違います。飲食業なら保健所、建設業なら都道府県の担当課、といった具合です。会社設立の前に問い合わせておいてください。
許認可の要件と、税務上の線を比較して矛盾することもあります。たとえば許認可で1,000万円以上が求められる業種なら、消費税の免除は諦めることになります。この場合は事業として成り立つかどうかで判断してください。おすすめは、許認可の要件を優先することです。要件を満たせなければ事業ができません。
なお、許認可の要件には資本金以外のものもあります。事務所の面積、専任の資格者の配置、実務経験。これらもあわせて確認しておくと、あとで慌てずに済みます。
法人口座の開設と資本金

法人口座の開設では、事業の実態が見られます。資本金の額も、その材料のひとつになります。
資本金1円で会社設立をすることは可能ですが、口座の審査で説明を求められることがあります。事業を始めるための元手がないと見られるためです。
金融機関に法人口座を開設したいなら、資本金の額は100万円以上にするのがよいという考え方が紹介されています。決まった基準があるわけではありませんが、目安のひとつとして知っておく価値はあります。
ただし、資本金だけで審査が決まるわけではありません。事業の内容、事業目的の書き方、Webサイトの有無、契約書や請求書の存在。総合的に判断されます。会社設立の直後は、これらをそろえておくことのほうが効きます。
融資の場面でも、資本金は見られます。自己資金がどれだけあるかは、事業への本気度を示す材料になるためです。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金を検討しているなら、この点も考慮してください。
自己資金と借入を比較したときの見え方も違います。全額を借入でまかなうより、自己資金を入れているほうが評価されるのが一般的です。資本金として入れたお金は、この自己資金にあたります。
会社設立のおすすめとしては、口座と融資まで見据えて金額を決めることです。運転資金の計算に、この観点も加えてみてください。
よくある質問

あとから資本金を増やせますか
増資の手続きで増やせます。ただし登記が必要で、登録免許税は増加した資本金の額の1,000分の7、3万円に満たないときは3万円です。会社設立のときに決めておけばかからない費用です。
資本金は使ってしまってよいのですか
使えます。資本金は会社の元手なので、事業のために使うものです。設備を買う、仕入れをする、家賃を払う。すべて資本金から出せます。口座に置いておかなければならないお金ではありません。
現物出資はできますか
パソコンや車などの財産を出資に充てることもできます。ただし手続きが複雑になり、価額の証明も必要になります。会社設立をはじめて行うなら、現金だけで出資するほうが簡単です。
資本金と資本準備金の違いは何ですか
払い込まれた額のうち、一部を資本準備金として計上することができます。資本金の額を抑えられるので、税務上の扱いに影響することがあります。この扱いは判断が難しいので、税理士に相談してください。会社設立の段階で相談する価値のある論点です。
まとめ|運転資金から出して、2つの線で調整する

資本金は1円から設定できますが、金額によって税金や手数料の扱いが変わります。運転資金から逆算して、2つの線を意識して調整してください。
この記事で押さえたこと
- ✓事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上だと、設立1期目から消費税の納税義務が生じる。
- ✓株式会社の定款認証の手数料は、資本金100万円未満で3万円(要件を満たせば1万5,000円)。
- ✓運転資金は、初期費用+月の固定費×3〜6か月で見積もる。
- ✓許認可の要件で資本金の額が定められている業種がある。先に確認する。
- ✓あとから増資するには登記が必要で、登録免許税は最低3万円。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。消費税の扱いは他の要件でも変わりますので、実際の判断は税理士にご確認ください。許認可の要件は所管の窓口へお問い合わせください。
出典日本公証人連合会「Q3. 定款の認証に要する費用、株式会社設立の費用等はいくらですか。」
運転資金から逆算して、線を意識して調整する
資本金の決め方は、順序さえ守れば難しくありません。まず必要な運転資金を出し、次に1,000万円と100万円の線を意識して調整する。この2段階で決まります。
見栄えのために大きくするのは、おすすめしません。1,000万円以上にすると消費税の扱いが変わりますし、法人住民税の均等割も上がります。会社設立の直後に負担を増やす理由はありません。
判断に迷うなら、税理士の無料相談で自分の数字を当てはめてもらってください。資本金は登記事項なので、あとから変えるには手続きと費用がかかります。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
この記事のキーワードに「会社設立 おすすめ 比較」を足して検索したときに実際に出てきたサイトです。掲載の順番は優劣を示すものではありません。内容は各サイトの公開時点のものなので、料金や条件は、リンク先で最新の表示をご確認ください。
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