この記事は「資本金をあとから変えられるのか、変えるといくらかかるのか」を知りたい人に向けたものです
会社設立のときに決めた資本金は、あとから変えられます。増やすことも、減らすこともできます。ただし、どちらも登記が必要で、費用と手間がかかります。
増資の登記にかかる登録免許税は、増加した資本金の額の1,000分の7で、3万円に満たないときは3万円です。これに司法書士の報酬が加わるので、1回の増資で数万円が動きます。会社設立のときに決めておけば、この費用はかかりません。
この記事では、増資と減資のそれぞれについて、どんな場面で必要になるのか、いくらかかるのかを整理します。会社設立の段階で資本金を決めるときの参考にしてください。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
増資が必要になる場面

会社設立のあとに資本金を増やす場面は、いくつかあります。よくあるのは次のようなものです。
増資が必要になる主な場面
- 外部の投資家から出資を受ける(株式会社の場合)
- 許認可の要件を満たすために、資本金を増やす必要が出た
- 取引先や金融機関から、資本金の規模を求められた
- 利益を資本金に振り替えて、財務の見え方を整える
- 役員や従業員が出資して、経営に参加する
1つ目は、株式会社ならではの場面です。株式を発行して出資を受けると、その分だけ資本金が増えます。合同会社には株式による資金調達の仕組みがありません。この点は、会社設立のときに会社形態を選ぶ理由のひとつになります。
2つ目は、事業を広げるときに出てきます。新しい許認可を取ろうとしたら、資本金の要件があった。この場合、要件を満たすまで増資することになります。会社設立のときに将来の事業まで見通せていれば、避けられる出費です。
4つ目の利益を資本金に振り替える形は、資本金の額を増やしたいが新たに資金を入れたくない場合に使われます。会社に蓄積された利益を資本金に組み入れるという処理です。おすすめできる場面は限られますが、方法として存在することは知っておいてよいでしょう。
3つ目は、はっきりした基準があるわけではありません。ただ、資本金は登記事項として公開されるので、取引先が見る数字ではあります。
株式会社と合同会社を比較すると、増資のしやすさが違います。株式会社は株式を発行して外部から出資を受けられますが、合同会社は社員の追加という形になります。おすすめの選び方としては、将来の増資を見込むなら株式会社を選ぶことです。会社設立の段階での判断が、ここに効いてきます。
いずれの場面でも、増資には登記が必要です。次の章で、その費用を見ていきます。
増資にかかる費用

増資の登記にかかる登録免許税は、国税庁の税額表で定められています。
増資の登録免許税
株式会社または合同会社の資本金の増加の登記(一定の登記を除く)は、増加した資本金の額の1,000分の7で、3万円に満たないときは申請件数1件につき3万円とされています。
つまり、増資額が約428万円までは3万円、それを超えると0.7%の計算になります。100万円の増資でも1,000万円の増資でも、下限の3万円は変わりません。

自分で増資の登記を申請することもできます。法務局のサイトに申請書の様式と記載例が公開されているので、それに沿って作成する形です。ただし、決議の議事録や払込みの証明など、書類は設立のときより複雑になります。おすすめとしては、司法書士に頼むほうが確実です。
これに司法書士の報酬が加わります。手続きの内容によりますが、数万円が目安になることが多いようです。合計すると、1回の増資で5万円から10万円ほどが動きます。
会社設立のときに資本金を決めておけば、この費用はかかりません。設立の登記に含まれるからです。「とりあえず少なくしておいて、あとから増やす」という考え方は、この費用のぶん損になります。
金額を比較すると、増資額が428万円あたりで下限と0.7%が入れ替わります。それより小さい増資でも3万円かかるので、少額の増資を何度も繰り返すのは効率が悪いということになります。おすすめとしては、増資するならまとめて行うことです。
ただし、必要のない資金を最初から入れる必要もありません。事業に必要な額を、会社設立の段階で見積もる。これが基本です。
増資で気をつける税務上の線

増資には、費用以外にも注意すべき点があります。資本金の額が増えることで、税務上の扱いが変わることがあるからです。
ひとつめが1,000万円の線です。事業年度開始の日の資本金の額が1,000万円以上である新設法人は、消費税の納税義務の免除を受けられません。設立2期目に入る前に増資して1,000万円以上になると、この扱いを受ける可能性があります。
ふたつめが1億円の線です。国税庁の案内によると、法人税の税率は資本金1億円以下の法人などについて、年800万円以下の部分に軽減された税率が適用されるとされています。1億円を超えると、この軽減が使えなくなります。
また、法人住民税の均等割も資本金の額によって区分が変わります。増資すると、この均等割が上がることがあります。金額は自治体によって違うので、確認してください。
つまり、増資は登記の費用だけでなく、その後の税負担にも影響します。金額を決めるときは、この点も含めて税理士に相談することをおすすめします。
増資する前とした後で、税負担がどう変わるかを比較しておくことをおすすめします。登記の費用だけを見て判断すると、あとで税額の増加に驚くことになります。とくに消費税の免除が使えなくなる場合の影響は小さくありません。
会社設立の直後に増資を検討する場合は、とくに1,000万円の線に注意してください。免除の期間中に線を超えると、その恩恵を失うことになります。
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減資という選択もあります

資本金を減らすこともできます。これを減資と呼びます。会社設立の直後にはあまり出てこない話ですが、知っておいて損はありません。
減資が検討されるのは、たとえば次のような場面です。資本金が大きすぎて税負担が重い、繰越損失を資本金と相殺したい、といったケースです。
ただし、減資の手続きは増資より重くなります。株主総会の特別決議に加えて、債権者保護の手続きが必要になります。官報への公告や、知れている債権者への個別の催告が求められます。
減資で必要になる主な手続き
- 株主総会の特別決議(合同会社は社員の同意など)
- 債権者保護の手続き(官報公告と、個別の催告)
- 一定の期間を置く(債権者が異議を述べる期間)
- 登記の申請
官報への公告には掲載料がかかりますし、期間も必要です。思い立ってすぐできる手続きではありません。会社設立の段階から、減資が必要になるような金額設定は避けたいところです。
なお、資本金を減らしても、そのお金が会社から出ていくわけではありません。資本金の額という登記事項が変わるだけで、会社の財産そのものが減るわけではないのが通常です。この点は誤解されやすいところです。
増資と減資を比較すると、手続きの重さがまるで違います。増資は決議と登記で済みますが、減資は債権者保護の手続きが加わります。おすすめの考え方としては、減資が必要になるような資本金設定を最初から避けることです。
減資を検討する場面になったら、税理士と司法書士に相談してください。判断も手続きも、専門家の関与が必要な領域です。
設立時に決めるか、あとで増やすか

ここまでを踏まえて、会社設立の段階で資本金をどう決めるべきかを整理します。

費用だけを見れば、会社設立のときに決めておくほうが得です。設立の登記に含まれるので、追加の費用がかかりません。
ただし、必要のない資金を最初から入れる意味はありません。手元の資金を全部資本金にしてしまうと、個人の生活に使えるお金がなくなります。会社と個人のお金は別なので、資本金にしたお金は簡単には戻せません。
おすすめの考え方としては、事業に必要な運転資金を見積もって、その額を資本金にすることです。多すぎず、少なすぎず。会社設立の段階でこの見積もりを丁寧にやっておけば、あとから増資する場面は減ります。
おすすめの目安をひとつ挙げると、会社設立の直後に必要な運転資金の3か月から6か月分です。これで足りなければ、融資や増資を検討する。最初から余分に入れておく必要はありません。
外部から出資を受ける予定があるなら、話は別です。その場合は増資が前提になるので、設立時の資本金は自分が出せる額で構いません。
資本準備金という考え方

払い込まれた額の全部を資本金にしなければならない、というわけではありません。一部を資本準備金として計上することができます。
この方法を使うと、実際に払い込んだ額より資本金の額を小さくできます。たとえば1,000万円を払い込んで、500万円を資本金、500万円を資本準備金とする、といった形です。
資本金の額が小さくなると、消費税や法人住民税の均等割の扱いに影響することがあります。1,000万円の線を超えたくないが、資金は多く入れたいという場合に検討される方法です。
ただし、この扱いは判断が難しい領域です。会社の財務の見え方にも関わりますし、将来の資本政策にも影響します。会社設立の段階で使うかどうかは、税理士に相談してください。
なお、資本準備金を使う場合でも、払い込む金額そのものは変わりません。会社に入るお金は同じで、その内訳が変わるだけです。この点を誤解して「資本準備金にすれば資金が少なくて済む」と考えないでください。おすすめの理解のしかたは、登記される数字を調整する方法だと考えることです。
また、資本準備金にした分も、あとから資本金に組み入れることができます。この場合も登記が必要で、登録免許税がかかります。
資本金と資本準備金を比較すると、登記事項として公開されるのは資本金の額です。資本準備金にした分は、貸借対照表には出ますが登記事項ではありません。対外的な見え方を考えるうえでも、この違いは知っておく価値があります。
会社設立のおすすめとしては、まず資本金の額をシンプルに決めることです。資本準備金を使うのは、金額が大きくて線をまたぐ場合に限られます。
よくある質問

増資はいつでもできますか
手続きを踏めばいつでもできます。ただし、決議と登記が必要なので、思い立ってすぐ完了するわけではありません。許認可の要件を満たすために急ぐ場合は、日程に余裕を見てください。
自分のお金で増資してもよいですか
代表者自身が出資する形の増資もできます。会社に資金を入れる方法としては、増資のほかに役員からの借入という形もあります。どちらがよいかは状況によるので、税理士に相談してください。
増資すると株式の数も増えますか
株式会社の場合、株式を発行して出資を受ける形なら株式の数も増えます。発行可能株式総数の範囲内である必要があります。範囲を超える場合は、定款の変更も必要になります。会社設立のときに、余裕をもった数を設定しておく理由はここにあります。
合同会社でも増資できますか
できます。社員が追加で出資する、新しい社員が加入する、といった形です。ただし株式のような仕組みはないので、外部から広く資金を集めることには向きません。この点は、会社設立のときに会社形態を選ぶ判断材料になります。
まとめ|設立時に決めておくのがいちばん安く済みます

資本金はあとから変えられますが、増資には登記が必要で費用がかかります。会社設立の段階で必要な額を見積もっておくのが、いちばん安く済む方法です。
この記事で押さえたこと
- ✓増資の登録免許税は、増加額の0.7%で3万円に満たないときは3万円。
- ✓これに司法書士の報酬が加わるので、1回の増資で数万円から10万円ほど。
- ✓増資で資本金1,000万円以上になると、消費税の扱いが変わることがある。
- ✓減資は債権者保護の手続きが必要で、増資より重い。
- ✓払込額の一部を資本準備金にすることもできる。判断は税理士に相談。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。制度は変わりますので、実際の手続きの前に国税庁と法務局の案内をご確認ください。税務の判断は税理士に、登記の手続きは司法書士にご相談ください。
変えられますが、最初に決めておくほうが安く済みます
資本金はあとから変えられます。ただし、1回の増資で登録免許税だけでも最低3万円、これに司法書士の報酬が加わります。会社設立のときに決めておけば、かからない費用です。
とはいえ、事業が育って必要になれば、増資は当然の選択です。そのときに慌てないよう、費用と手続きの大枠だけ知っておいてください。
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