この記事は「株式会社と合同会社、どちらで会社設立するか決めきれない」人に向けたものです
会社設立を決めたあと、最初にぶつかるのがこの選択です。株式会社にするか、合同会社にするか。費用は合同会社のほうが10万円ほど安く、手続きも軽い。それだけ聞くと合同会社に見えますが、費用だけで決めてよいものかどうか、判断がつきません。
違いの根っこにあるのは、所有と経営が分かれているかどうかです。株式会社は出資する人と経営する人を分けられます。合同会社は、原則として出資した人が経営します。この違いから、費用も信用も資金調達の方法も枝分かれしています。
この記事では、8つの軸で両者を比較します。会社設立のおすすめは人によって変わりますが、判断の材料はこの8つでほぼ足ります。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
根本の違いは、所有と経営が分かれているかどうか

細かい違いを並べる前に、根っこを押さえておきます。株式会社は、出資する人(株主)と経営する人(取締役)を分けられる仕組みです。合同会社は、出資した人(社員)が原則として経営も行います。
この違いから、いろいろなことが決まります。株式会社は株式を発行して外部から資金を集められますが、そのぶん株主総会や決算公告といった仕組みが要ります。合同会社は外部からの出資を受けにくいかわりに、意思決定が早く、維持の手間も軽くなります。
もう少し具体的に言うと、株式会社では株主が出資した金額の範囲でしか責任を負わないかわりに、経営そのものは取締役に委ねる形になります。だから株主を保護する仕組みが必要で、株主総会や決算公告、役員の任期といった制度がついてきます。合同会社の社員も有限責任ですが、出資者と経営者が同じ人なので、その保護の仕組みが軽くて済むという整理です。
会社設立のおすすめを考えるとき、この根っこを押さえておくと、あとの違いが理解しやすくなります。費用が安いのも、手続きが軽いのも、外部の出資者がいない前提だからです。
言い方を変えると、株式会社は「他人のお金を預かって運用する器」として作られていて、合同会社は「自分たちのお金で自分たちが事業をする器」として作られています。会社設立でどちらがおすすめかを考えるとき、自分の事業がどちらの器に合うかを想像してみてください。
なお、合同会社でも社員(出資者)を増やすことはできますし、業務を執行しない社員を置くこともできます。ただし、株式のように持分を細かく分けて流通させる仕組みはありません。
設立費用を比較する

会社設立の費用でいちばん分かりやすい差がここです。合同会社には定款認証の手続きそのものがなく、登録免許税の下限も低く設定されています。

国税庁の税額表では、株式会社の設立登記は資本金の額の1,000分の7で15万円に満たないときは15万円、合同会社は同じく1,000分の7で6万円に満たないときは6万円とされています。下限だけで9万円の差です。
さらに、株式会社には定款認証の手数料がかかります。資本金100万円未満なら3万円、要件を満たせば1万5,000円。合同会社にはこれがありません。合計すると10万円前後の差になります。
この10万円をどう見るかは、事業の規模によります。年商が数百万円の段階なら小さくない金額ですし、数千万円を見込んでいるなら誤差の範囲です。会社設立のおすすめを費用だけで決めるのがすすめられないのは、この金額が事業の期間で見れば埋まってしまうからです。
なお、特定創業支援等事業の証明書を取れば、登録免許税は半額になります。株式会社なら7.5万円、合同会社なら3万円。この制度は両方に使えますので、費用を抑えたいならどちらを選ぶにしても検討する価値があります。
なお、どちらも紙の定款で作れば収入印紙4万円がかかります。合同会社だから電子定款は関係ない、ということではありません。会社設立の費用を抑えたいなら、どちらを選んでも電子定款にしてください。
維持の手間を比較する

設立費用の差は一度きりですが、維持の手間は毎年続きます。長い目で見ると、こちらのほうが効いてくることもあります。
ここで言う「維持の手間」は、税務申告のような両方に共通する作業ではなく、会社形態そのものから生じる作業のことです。決算や申告は、どちらの形態でも同じように必要になります。会社設立のおすすめを考えるときは、この2種類の手間を分けて見てください。

いちばん効くのが役員の任期です。株式会社では、任期が満了すると同じ人が続ける場合でも重任の登記が必要になります。登録免許税は1件につき1万円(資本金の額が1億円以下の会社の場合)。これに司法書士の報酬が加わります。
株式の譲渡制限がある会社なら、取締役の任期を最長10年まで伸ばせるとされています。それでも10年に一度は登記が必要です。合同会社には、この仕組み自体がありません。
意思決定の速さも実務では効きます。株式会社では、重要な決定に株主総会の決議が必要になる場面があります。一人株主なら形式的に済みますが、株主が複数いると招集や議事録の作成が発生します。合同会社は社員の同意で進められるので、この手間がありません。
決算公告も違います。株式会社には決算公告の義務がありますが、合同会社にはありません。官報に掲載する場合は掲載料がかかるので、この差も毎年の費用に影響します。
信用と、取引先からの見え方

合同会社のデメリットとしてよく挙げられるのが、社会的信用度です。株式会社と比べて知名度が低く、取引先に誤った先入観を持たれることがあると解説されています。
ただし、この影響は業種によってかなり違います。大企業と取引する業種、官公庁の入札に参加する業種では、会社形態を見られることがあります。一方、消費者向けのサービスや、実績で評価される業種では、ほとんど気にされないのが実際のところです。
金融機関との取引でも、形態そのものより決算の内容と事業計画が見られるのが実際のところです。設立直後は決算がないので、事業計画と自己資金の状況が判断材料になります。合同会社だから融資が受けられない、ということはありません。
実際には、合同会社の形で事業を続けている有名企業もあります。形態そのものより、事業の中身と実績のほうが見られるというのが実感に近いところでしょう。ただし、会社設立の段階では実績がないので、形態が判断材料になりやすいのも事実です。
採用の場面についても触れておきます。求人に応募する側が会社形態を見ることはありますが、実際に応募を左右するのは事業の内容と待遇です。会社設立の直後は知名度がないので、形態にかかわらず説明が必要になります。おすすめとしては、形態を気にするより、何をしている会社かを伝えられるようにしておくことです。
迷ったら、想定している取引先に会社形態を気にする相手がいるかどうかを考えてみてください。心当たりがなければ、合同会社で問題ないことが多いはずです。
資金調達の方法を比較する

株式会社は株式を発行して資金を集められます。合同会社にはこの仕組みがありません。これが両者のいちばん実質的な違いです。
株式会社にできて合同会社にできないこと
- 株式を発行して、外部の投資家から出資を受ける
- ベンチャーキャピタルからの投資を受ける(株式の取得を前提とするため)
- 将来的に株式を上場する
- ストックオプションを従業員に付与する
逆に、融資については会社形態による差はそれほど大きくありません。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方が対象で、会社形態を条件にしていません。事業計画と自己資金の状況で判断されます。
補助金や助成金についても、会社形態そのものが要件になっていることは多くありません。出資を受けるつもりがないなら、資金調達の面で合同会社が不利になる場面は限られます。
法人口座の開設についても、会社形態による明確な差はありません。ただし、設立直後はどちらの形態でも審査に時間がかかることがあります。事業の実態を示す資料を用意しておくことのほうが、形態より効きます。
つまり、会社設立のおすすめを資金調達の観点から考えるなら、問いはひとつです。外部から出資を受ける予定があるか。あるなら株式会社、ないなら合同会社で構いません。
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税金の扱いは、ほとんど同じです

よくある誤解として、合同会社のほうが税金が安いという話があります。これは正しくありません。法人税の計算も、消費税の扱いも、会社形態による差はありません。
たとえば消費税では、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の新設法人は、設立1期目から納税義務があります。これは株式会社でも合同会社でも同じです。役員報酬の扱いも、法人住民税の均等割も、形態では変わりません。
ときどき見かけるのが、合同会社は決算公告が不要だから決算をしなくてよい、という誤解です。決算公告の義務がないだけで、決算そのものと法人税の申告は必要です。会社設立をした以上、毎年の申告からは逃れられません。
違うのは、あくまで設立費用と維持の手間の部分です。節税のために合同会社を選ぶ、という考え方は成り立ちません。会社設立の比較記事でこの点を混同しているものを見かけたら、注意して読んでください。

社会保険についても同じです。合同会社でも、報酬を受ける業務執行社員は社会保険の加入対象になります。会社設立の直後に「合同会社なら社会保険に入らなくてよい」と考えるのは誤りなので、注意してください。おすすめは、加入義務の判断を年金事務所か社会保険労務士に確認することです。
ただし、合同会社では「役員」ではなく「業務執行社員」という呼び方になるなど、用語が違う場面があります。書類を作るときに戸惑うことがあるので、依頼先に確認しながら進めてください。
8つの軸で並べて比較する

ここまでの内容を一覧にします。会社設立のおすすめを判断するときの材料として使ってください。

表を見て分かるとおり、合同会社が不利なのは株式による資金調達と、取引先からの見え方の2点に集約されます。この2点が問題にならないなら、合同会社を選ばない理由はあまりありません。
判断に迷う人へのおすすめの考え方を書いておきます。3年後に自分の会社がどうなっていてほしいかを想像してみてください。外部から出資を受けて人を増やしているイメージなら株式会社、いまと同じ規模で身軽に続けているイメージなら合同会社。会社設立の形態は、事業の方向性の表明でもあります。
逆に、この2点のどちらかが重要なら株式会社です。10万円の差で迷うより、事業の方向性で決めてください。
まとめ|出資を受けるかどうかで決まります

株式会社と合同会社の違いを8つの軸で比較しました。根っこにあるのは、所有と経営が分かれているかどうかです。
この記事で押さえたこと
- 設立の実費は、電子定款・資本金100万円未満で株式会社16.7万円〜、合同会社6万円〜。
- 合同会社には役員の任期がなく、決算公告の義務もない。維持の手間が軽い。
- 株式による資金調達ができるのは株式会社だけ。融資や補助金は形態で差が出にくい。
- 税金の扱いは、法人税も消費税も会社形態で変わらない。
- 決め手は、外部から出資を受ける予定があるかどうか。
なお、合同会社から株式会社への組織変更もできます。ただし手続きに費用と時間がかかるので、数年以内に確実に必要になるなら最初から株式会社にするほうが結局は安く済みます。おすすめの判断は、必要になる時期がどれくらい確からしいかで決めることです。
金額と制度は2026年8月時点で確認できたものです。制度は変わりますので、実際の手続きの前に法務局・公証役場・国税庁の案内をご確認ください。会社形態の選択に迷う場合は、税理士や司法書士にご相談ください。
外部から出資を受けるかどうかで、ほぼ決まります
8つの軸を並べましたが、決め手になるのはたいてい1つです。外部から出資を受ける予定があるかどうか。あるなら株式会社、ないなら合同会社。これでほとんどの場合に答えが出ます。
迷うのは、いまは予定がないが将来は分からない、という場合でしょう。この場合は、合同会社から始めて必要になったら株式会社に組織変更するという道もあります。ただし組織変更には費用と時間がかかるので、数年以内に確実に必要になるなら最初から株式会社のほうが結局は安く済みます。
費用の内訳や設立の手続きについては、同じカテゴリーの別の記事でも扱っています。あわせてご覧ください。
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