この記事は「決算月を決めてしまったが、変えたくなった」人に向けたものです
会社設立のときに決めた決算月が、事業を始めてみたら合っていなかった。繁忙期と重なる、納税の時期に資金が薄い、免税期間をもっと長く取れたはずだった。こうした事情で決算月を変えたくなることはあります。
結論から書くと、決算月は変更できます。しかも登記は不要です。事業年度は登記事項ではないので、法務局への手続きはありません。ただし、定款の変更と税務署などへの届出は必要です。
この記事では、変更の手続きと、変更したときに何が起こるかを整理します。会社設立のときに決めた内容を見直したい方は、参考にしてください。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
決算月は登記事項ではありません

まず押さえておきたいのが、事業年度は登記事項ではないという点です。商号や本店所在地、役員の氏名は登記されますが、事業年度は登記されません。
したがって、決算月を変更しても登記は不要です。登録免許税もかかりませんし、司法書士に頼む必要もありません。この点は、他の変更と比べてかなり楽なところです。

登記が要るかどうかは、その情報が第三者に公開されるべきものかどうかで決まっています。商号や本店は取引の相手が知る必要のある情報ですが、事業年度はそうではありません。だから登記事項になっていない、という整理です。会社設立のときにこの区別を知っておくと、あとで変更が必要になったときに慌てません。
表のとおり、決算月だけは登記が要りません。会社設立のときに決めたことのなかで、最も変えやすい項目だと言えます。
ただし、まったく手間がかからないわけではありません。定款の変更と、税務署などへの届出が必要です。次の章で見ていきます。
おすすめの考え方としては、変更できることを知ったうえで、会社設立のときに真剣に決めるということです。「あとで変えられるから」と適当に決めると、結局は手続きの手間を負うことになります。
なお、変更しやすいからといって頻繁に変えるものではありません。事業年度が変わると、比較する数字の期間もずれます。会社設立のときに考えて決めておくほうが、やはり望ましいところです。
変更に必要な手続き

決算月を変えるには、次の手続きが必要になります。

国税庁の案内によると、事業年度を変更した場合は異動事項に関する届出が必要とされています。所轄の税務署へ提出します。地方税についても、都道府県と市区町村へ届出が必要になります。
株主総会の特別決議が必要な点にも注意してください。一人株主なら形式的に済みますが、株主が複数いる場合は招集の手続きが要ります。議事録も残しておいてください。
定款の書き換え方については、条項の番号や文言を残したまま該当部分だけを直す形が一般的です。変更のたびに全文を作り直す必要はありません。ただし、どの時点でどう変わったかが分かるように、議事録とセットで保管しておいてください。
定款そのものは、会社が保管しているものを書き換えます。公証人の認証を受け直す必要はありません。会社設立のときに認証を受けた定款は、そのまま原始定款として残ります。
届出のおすすめの順番は、税務署を先にすることです。国税の届出を済ませてから、地方税の届出に進むと、必要な情報がそろっています。自治体によって書式が違うので、それぞれの窓口の案内を確認してください。
手続き自体は難しくありませんが、届出の書式や提出先を確認する手間はあります。税理士に頼んでいるなら、まとめて対応してもらえることが多いはずです。
変更した年の事業年度は短くなります

決算月を変更すると、変更した年の事業年度が短くなります。事業年度は1年を超えることができないためです。
たとえば3月決算の会社が9月決算に変更する場合、4月から9月までの6か月間が1つの事業年度になります。この期間で決算と申告をすることになります。
逆に、9月決算の会社が3月決算に変更する場合も、10月から3月までの6か月が1つの事業年度になります。どちらの方向に変えても、短い事業年度が1回発生します。
短い事業年度で起きること
- その期間で決算と申告をすることになる(決算の回数が一時的に増えます)
- 税理士に頼んでいる場合、決算の報酬が発生することがあります
- 月数按分が必要な項目が出てきます(減価償却や均等割など)
- 前年と比較する期間がずれるため、数字の比較がしにくくなります
2つ目は費用に直結します。決算が1回増えるということは、決算報酬も1回分増えるということです。変更のメリットと、この費用を比べてください。
3つ目も実務では手間になります。法人住民税の均等割は年額で決まっているので、短い事業年度では月数で按分することになります。減価償却も同様です。
短い事業年度と通常の事業年度を比較すると、作業量そのものは減ります。取引が少ないぶん、集計する項目も少なくなるためです。ただし按分の計算が入るので、手間が単純に半分になるわけではありません。おすすめとしては、この1回は税理士に見てもらうことです。
会社設立の直後に変更するなら、まだ取引が少ないので影響は小さめです。事業が育ってから変えると、影響が大きくなります。おすすめのタイミングとしては、早めに判断することです。
消費税の免税期間への影響

会社設立の直後に決算月を変更する場合、消費税の扱いに影響することがあります。
事業年度開始の日の資本金が1,000万円未満の新設法人は、基準期間がないため設立1期目と2期目が免除の対象になりうるとされています。ここで言う「期」は事業年度の単位です。
つまり、決算月を変更して事業年度が短くなると、その短い期間も1期として数えられる可能性があります。結果として、免除される合計の期間が短くなることがあります。
逆に、決算月を後ろにずらして1期目を長くできる場合は、免除の期間を延ばせることもあります。ただし、事業年度は1年を超えられないという制約があります。
この扱いは細かい要件が絡むので、実際の判断は税理士に確認してください。特定新規設立法人に該当する場合など、他の要件でも扱いが変わります。
免税期間を延ばす目的で変更を考えるなら、おすすめは早い段階で税理士に相談することです。変更の方向によって効果が逆になることもあるので、自己判断で進めないほうが安全です。
会社設立の直後に決算月の変更を考えているなら、この点を確かめてから動いてください。せっかくの免除期間を短くしてしまっては、本末転倒です。
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変更を検討する場面

実際に決算月の変更が検討されるのは、次のような場面です。
繁忙期の重なりは、実際に1年回してみないと分からないことが多いところです。会社設立の時点では想像で決めるしかないので、ずれることもあります。1期目を終えた時点で振り返って、必要なら変える。この進め方は現実的です。
1つ目と2つ目は、毎年続く負担なので、早めに変えるほうが得です。1回の変更で決算が1回増えますが、そのあと何年も楽になります。
グループ会社で期をそろえると、連結での管理がしやすくなります。また、親会社の決算に合わせて子会社の数字を出す必要がある場合、期がずれていると余計な作業が発生します。この事情がある場合は、変更が現実的な選択になります。
3つ目は、外部の事情によるものです。この場合は選択の余地がないこともあります。
4つ目は、会社設立の直後に限られます。気づいたら早めに検討してください。時間が経つほど、変更の効果は薄くなります。
おすすめの判断のしかたは、変更で毎年浮く時間や資金を、5年分に換算してみることです。1回の決算報酬を上回るなら、変える価値があります。逆に、効果が小さいなら、そのままでも構いません。
いずれの場合も、変更にかかる手間と費用を、変更で得られるものと比べてください。決算が1回増える費用を上回る効果があるなら、変える価値があります。
変更したあとにやること

届出を済ませたら、社内の設定も変える必要があります。忘れやすいところなので、リストにしておきます。
変更後にやること
- 会計ソフトの事業年度の設定を変更する
- 決算と申告の予定をカレンダーに入れ直す
- 税理士と契約している場合、決算の時期を共有する
- 取引先に伝える必要があるかを確認する(請求の締めに影響する場合)
- 定款の写しを提出している先があれば、必要に応じて更新する
会計ソフトによっては、事業年度の設定を変更すると過去のデータの扱いに影響することがあります。変更の前にバックアップを取るか、サポートに確認してから操作してください。会社設立からの記録は、まとめて失うわけにはいきません。
1つ目はこれはやっておいてください。会計ソフトの設定が古いままだと、決算書の集計期間がずれます。会社設立のときに設定した内容が残っているので、変更を反映させる必要があります。
2つ目も大事です。決算月が変われば、申告と納税の時期も変わります。古い予定のままだと、期限を逃す危険があります。
4つ目は業種によります。請求の締めや支払いのサイクルを事業年度に合わせている場合は、取引先に影響することがあります。事前に伝えておくとトラブルを避けられます。
社内の書類のテンプレートに事業年度を記載している場合も、更新が必要です。請求書、契約書、社内規程。おすすめは、変更を決めた時点で「事業年度」と書かれている書類を洗い出しておくことです。
なお、変更したあとの最初の決算は、期間が短くなるぶん作業も少なくなることが多いはずです。この機会に、決算の流れを整理しておくのもよいでしょう。
よくある質問

何度でも変更できますか
手続きを踏めば変更できます。ただし、頻繁に変えると数字の比較ができなくなりますし、そのたびに短い事業年度が発生します。合理的な理由なく繰り返すのは避けたほうがよいでしょう。
変更のタイミングに決まりはありますか
いつでもできますが、事業年度が始まったばかりの時期に変更すると、短い事業年度がとても短くなります。数か月分の決算をすることになるので、手間の割に得るものが少なくなります。おすすめは、事業年度の後半に入ってから検討することです。
変更にはいくらかかりますか
登記が不要なので、登録免許税はかかりません。かかるのは、税理士に手続きを頼む場合の報酬と、短くなった事業年度の決算報酬です。登記が必要な他の変更と比べると、ずっと軽い費用で済みます。
事業年度の途中でも変更できますか
できます。その場合、変更前の事業年度開始日から新しい決算日までが1つの事業年度になります。1年を超えることはできないので、そこは調整が必要です。詳しくは税理士にご確認ください。
合同会社でも同じ手続きですか
定款を変更する点は同じですが、決議の方法が違います。合同会社では、原則として総社員の同意が必要とされています。登記が不要な点と、税務署などへの届出が必要な点は同じです。
まとめ|登記は不要、届出は必要

決算月は会社設立のあとでも変更できます。登記が不要なので、他の変更より軽い手続きです。
この記事で押さえたこと
- 事業年度は登記事項ではないので、変更しても登記は不要。登録免許税もかからない。
- 定款の変更(株主総会の特別決議)と、税務署などへの届出が必要。
- 変更した年の事業年度は短くなる。決算が1回増えることになる。
- 会社設立の直後に変更すると、消費税の免除期間に影響することがある。
- 変更後は、会計ソフトの事業年度の設定も忘れずに変える。
制度と手続きは2026年8月時点で確認できたものです。消費税の扱いは要件によって変わりますので、実際の判断は税理士にご確認ください。届出については、税務署と自治体の案内をご覧ください。
登記が不要なぶん、他の変更より軽い手続きです
決算月の変更は、商号や本店の変更と比べると軽い手続きです。登記が不要なので、登録免許税も司法書士の報酬もかかりません。必要なのは定款の変更と届出だけです。
ただし、変更した年の事業年度が短くなるなど、扱いが少し複雑になります。決算と申告の回数も一時的に増えます。税理士に相談したうえで進めてください。
そもそもの決め方については、同じカテゴリーの別の記事で扱っています。変更を考える前に、そちらもご覧ください。
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