この記事は「事業目的に何をどこまで書けばいいのか分からない」人に向けたものです
会社設立の定款には、事業目的を書きます。何をする会社なのかを示す項目で、登記されるので誰でも見ることができます。ここで書き漏らすと、あとから追加するために変更登記が必要になります。
登記事項の変更の登記は、国税庁の税額表によると1件につき3万円です。これに司法書士の報酬が加わります。会社設立のときに1行足しておけば0円だったものが、あとからだと数万円になります。
この記事では、事業目的を書くときの原則と、どこまで書いておくべきかを整理します。許認可が必要な業種では表現そのものが問題になることもあるので、その点も扱います。
この記事は2026年8月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。
事業目的とは何を書くものか

事業目的は、その会社が行う事業を示すものです。定款の絶対的記載事項のひとつで、株式会社でも合同会社でも定めます。
登記されるので、登記事項証明書を取れば誰でも見ることができます。取引先や金融機関が、その会社が何をしているかを確認する材料になります。
ここで大事なのは、事業目的に書いていない事業を行うことが直ちに禁じられるわけではないという点です。ただし、許認可を取るときや融資を受けるときに、目的欄の記載を求められることがあります。
事業目的が見られる場面
- 許認可の申請(その事業が目的に入っているかを確認されます)
- 法人口座の開設(何をしている会社かの判断材料になります)
- 融資の申し込み(事業計画との整合が見られます)
- 取引先との契約(相手の与信審査で見られることがあります)
- 補助金や助成金の申請
会社設立をしたばかりの時期は、まだ実績がありません。だからこそ、登記されている情報が判断材料として使われます。事業目的は、その数少ない材料のひとつです。おすすめの考え方としては、初対面の相手に会社を説明する文章だと思って書くことです。
つまり、事業目的は対外的に何をしている会社かを示す看板です。書いていないと不便な場面がある、という理解でよいでしょう。

会社設立のおすすめの考え方としては、この看板に何を書くかを、実際に事業を始める場面を想像しながら決めることです。
3つの原則|適法性・営利性・明確性

事業目的を書くときに満たすべきものとして、一般に3つの原則が挙げられます。
実務でつまずくのは3つ目です。「各種コンサルティング業務」のような書き方は、何のコンサルティングか分かりません。「経営コンサルティング業務」「ITコンサルティング業務」のように、分野を示すのが一般的です。
逆に、細かく書きすぎるのも考えものです。事業の範囲を狭めてしまうと、少し違うことを始めるたびに変更が必要になります。明確でありつつ、ある程度の幅を持たせる。このさじ加減が難しいところです。
明確性については、専門用語をそのまま使ってよいのかという疑問も出ます。業界で通じる言葉なら使って構いませんが、一般に通じない略語は避けたほうが無難です。会社設立の担当者や金融機関の担当者が読んで分かる程度を目安にしてください。
迷ったら、同じ業種の会社の登記事項証明書を見てみてください。誰でも取得できるので、書き方の感覚をつかむのに役立ちます。会社設立の準備としては、数百円で得られる有効な情報です。
他社の記載と比較してみると、業界ごとの書き方の傾向が見えてきます。同じ事業でも、表現の仕方は会社によって違います。おすすめの確かめ方は、取引先や競合の登記事項証明書を数社ぶん取ってみることです。数百円で、実例が手に入ります。
また、法務局や司法書士に相談すれば、その表現で登記できるかを確認してもらえます。会社設立を代行に頼んでいるなら、依頼先が見てくれます。
どこまで書いておくべきか

範囲の決め方が、いちばん実務的な論点です。狭すぎても広すぎても困ります。
ちょうどよいのは、いま始める事業と、1〜2年のうちに始める見込みのある事業までです。3年先、5年先まで想像して並べる必要はありません。
また、最後に「前各号に附帯関連する一切の事業」という一項を入れるのが一般的です。主たる事業に付随する業務を広くカバーできるためです。ただし、この一項があれば何でもできるというわけではありません。
狭い書き方と広い書き方を比較すると、どちらにも代償があります。狭ければ変更登記の費用、広ければ説明の手間。おすすめは、この2つの代償を比べて、自分の事業でどちらが起こりやすいかを考えることです。
数としては、主要な事業を3つから5つ程度に絞り、重要度の高い順に並べるのが適切だと解説されています。上から順に読まれるので、いちばん力を入れる事業を先頭に置いてください。
附帯関連の一項について補足しておきます。この一項があると、主たる事業に付随する業務まで含められます。たとえば物販が主たる事業なら、その商品の企画や輸出入が付随する業務にあたることがあります。ただし、まったく別の事業までカバーするものではありません。過信しないでください。
会社設立のおすすめの進め方としては、まず自分の事業を書き出して、それから近いうちにやりそうなものを足す。この2段階で考えると整理しやすくなります。
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許認可が必要な業種は、表現が要件に関わります

許認可が必要な業種では、事業目的の書き方が許可の可否に影響することがあります。ここは慎重に決めてください。
許認可の申請では、その事業が定款の目的に入っているかを確認されるのが通常です。入っていなければ、定款を変更して登記し直してから申請することになります。
許認可が必要になりやすい業種の例
- 飲食業(保健所の営業許可)
- 建設業(建設業許可)
- 運送業(一般貨物自動車運送事業の許可など)
- 古物商(古物商許可)
- 旅行業、人材派遣業、産業廃棄物処理業など
業種によっては、求められる表現が具体的に決まっていることがあります。「建設業」とだけ書くのでは足りず、工事の種類まで示す必要がある、といった具合です。
許認可の申請は、会社設立の登記が完了してから行うのが一般的です。法人として許可を取るには、まず法人が存在している必要があるためです。つまり、事業目的を直すなら登記の前でなければ間に合いません。この順番も押さえておいてください。
要件は業種ごとに違い、自治体によって運用が異なることもあります。会社設立の前に、所管の窓口へ直接確認してください。「この表現で許可を取れますか」と聞けば、答えてもらえます。
許認可のある業種とない業種を比較すると、事業目的の重みがまるで違います。許認可がなければ多少ずれていても実害は出ませんが、許認可があると申請が通りません。おすすめとしては、許認可の有無をいちばん先に調べることです。
行政書士は許認可を扱う士業なので、この点の相談に向いています。会社設立と許認可をセットで考えるなら、行政書士に相談するのがおすすめです。
あとから追加すると3万円かかります

事業目的を追加するには、定款の変更と登記が必要です。費用がかかります。
国税庁の税額表によると、登記事項の変更の登記は1件につき3万円です。これに司法書士に頼む場合の報酬が加わるので、実際には数万円が動きます。

ここで大事なのは、複数の目的をまとめて追加する場合も、登記の件数としては1件になるのが通常だという点です。つまり、追加するなら一度にまとめたほうが効率的です。
逆に言えば、少しずつ何度も追加すると、そのたびに費用がかかります。会社設立のときに先を見て書いておけば、この出費は避けられます。
なお、事業目的の変更は登記事項の変更にあたるので、税務署などへの異動の届出も必要になることがあります。おすすめの進め方としては、変更を決めた時点で必要な手続きを一覧にすることです。登記だけで終わりではありません。
また、株主総会の特別決議も必要になります。一人株主なら形式的に済みますが、株主が複数いる場合は招集の手続きが要ります。
設立時に書く場合とあとから追加する場合を比較すると、費用の差は数万円です。会社設立の代行手数料が数千円から数万円であることを考えると、この差は小さくありません。おすすめは、設立の段階で少し時間をかけることです。
会社設立のおすすめとしては、この費用を頭に置いて、少し余裕をもって書いておくことです。無関係な事業まで並べる必要はありませんが、近いうちにやりそうなことは入れておいてください。
法人口座と融資での見られ方

法人口座の開設や融資の申し込みでは、登記事項証明書が提出されます。事業目的も当然見られます。
ここで問題になるのが、関係のない事業を並べすぎている場合です。何をしている会社なのかが読み取れないと、説明を求められることがあります。
金融機関は、その会社の事業の実態を確認する必要があります。事業目的が20も30も並んでいると、実際にどれをやっているのかが分かりません。この点でも、絞って書くほうが有利です。
また、融資の申し込みでは事業計画との整合も見られます。計画に書いた事業が目的に入っていないと、説明が必要になります。会社設立のときに、この点も考えておいてください。
創業融資の場面では、事業計画書と事業目的の整合が見られます。計画書に書いた事業が目的に入っていないと、なぜ入っていないのかを説明することになります。会社設立と融資の申し込みを近い時期に行う予定なら、両方を見ながら決めてください。
補助金や助成金の申請でも、対象となる事業を行っていることを示す材料として使われることがあります。制度によって扱いは違いますが、目的に入っているほうが説明しやすいのは確かです。

会社設立のおすすめとしては、事業目的を「対外的な説明の材料」と考えることです。読んだ人に何をしている会社かが伝わるかどうか。この基準で見直してみてください。
よくある質問

事業目的はいくつまで書けますか
法律上の上限はないとされています。ただし、多すぎると何をしている会社か読み取れなくなります。主要な事業を3つから5つ程度に絞るのが適切だと解説されています。これに附帯関連する事業の一項を加える形が一般的です。
順番に意味はありますか
法的な意味はありませんが、上から順に読まれます。いちばん力を入れる事業を先頭に置くのが自然です。重要度の高い順に並べるのが適切だと紹介されています。
事業目的に書いていない事業をやったらどうなりますか
直ちに違法になるわけではありません。ただし、許認可の申請では目的に入っていることが求められますし、融資や取引の場面でも説明が必要になることがあります。会社設立のときに書いておくのが無難です。
将来の事業をどこまで書いておくべきですか
1〜2年のうちに始める見込みのあるものまでが目安です。5年先、10年先まで想像して並べると、何をしている会社か分からなくなります。必要になったら、そのときにまとめて追加すればよいでしょう。
出典法務省「オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について」
まとめ|明確に、いまと近い将来まで

事業目的は、適法性・営利性・明確性の3つを満たすように書きます。範囲は、いま始める事業と1〜2年のうちに始める見込みのあるものまでです。
この記事で押さえたこと
- 事業目的は登記される。誰でも見ることができる。
- 適法性・営利性・明確性の3つの原則を満たす必要がある。
- 主要な事業を3〜5つ程度に絞り、重要度の高い順に並べる。
- 許認可が必要な業種では、表現が要件に関わる。所管の窓口へ確認する。
- あとから追加すると、登録免許税が1件につき3万円かかる。
制度と金額は2026年8月時点で確認できたものです。許認可の要件は業種と自治体によって異なりますので、所管の窓口へお問い合わせください。登記に関する点は、司法書士にご相談ください。
いまと、1〜2年先まで書いておいてください
事業目的の決め方は単純です。いま始める事業と、1〜2年のうちに始める見込みのある事業まで書く。それだけです。関係のない事業を並べる必要はありません。
許認可が必要な業種なら、表現が要件に合っているかを所管の窓口に確認してください。会社設立のあとに直すと、変更登記の費用がかかります。
迷ったら、会社設立を依頼する士業に相談してください。同じ業種の設立を扱っていれば、どこまで書いておくべきかの感覚を持っています。
他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください
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