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起業で成功しやすい業種は?|存続・黒字・売上の伸びの3つの物差しで、公的な追跡調査をもとに比較

起業で成功しやすい業種はどれか。「成功」を存続・黒字・売上の伸びの3つに分け、日本政策金融公庫の新規開業パネル調査などの一次統計で業種を比較しました。会社設立の前に知っておきたい、業種より効いている条件もまとめています。

  • 公開 2026年10月17日
  • 更新 2026年10月17日
  • 読了めやす 約12分
  • 本文 約8,262字
起業で成功しやすい業種は?|存続・黒字・売上の伸びの3つの物差しで、公的な追跡調査をもとに比較|会社設立のおすすめ比較
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この記事は「どうせ会社設立をするなら、うまくいきやすい業種を選びたい」と考えている人に向けたものです

「起業で成功しやすい業種」と検索すると、IT、コンサルティング、美容、介護といった名前が並ぶ記事がたくさん出てきます。ただ、何をもって成功と呼んでいるのかが書かれていないことがほとんどです。続いている会社のことなのか、儲かっている会社のことなのかで、答えはまるで変わります。

この記事では、成功を「存続」「黒字」「売上の伸び」の3つの物差しに分けます。そのうえで、開業した会社を5年間追いかけた日本政策金融公庫の「新規開業パネル調査」を中心に、公的な統計だけを使って業種を比較します。印象で並べたランキングは作りません。

結論を先に言うと、業種による差はたしかにあります。ただし、それ以上に差をつけているのは開業前の経験と準備でした。会社設立に進む前の判断材料として、順番に見ていってください。

この記事は2026年10月時点で確認できた内容をもとにしています。金額や制度は変わることがあるため、実際の手続きの前に一次情報でご確認ください。

起業の「成功」を何で測るか:存続・黒字・売上の伸び

起業の成功を存続・黒字・売上の伸びの3つで測ることを示したイラスト

起業で成功しやすい業種を比べる前に、成功の中身を決めておきます。ここでは公的な統計で数字が取れる、次の3つの物差しを使います。どれか1つだけで業種を選ぶと、ほかの2つで思わぬ落とし穴に当たることがあるからです。

存続
開業してから数年後も事業を続けているかどうか。いちばん基本的な物差しです。赤字のまま続いている会社も「存続」に入る点には注意が要ります。
黒字
採算が黒字基調かどうか。経営者の生活と、会社に残るお金に直結します。開業直後は赤字でも、数年で黒字に転じる会社が多いのが実情です。
売上の伸び
売上が増加傾向にあるか、従業者が増えているか。事業を大きくしたい人にとっての物差しです。
3つの物差しと、使う統計(2026年10月時点で公開されている資料)
物差し主な統計見られること注意点
存続日本政策金融公庫「新規開業パネル調査」(2016年開業企業を2020年末まで追跡)業種別の5年間の廃業割合公庫の融資先が対象。全国の全企業ではない
黒字同パネル調査/「2025年度新規開業実態調査」黒字基調の割合の推移業種別の黒字割合は公表されていない
売上の伸び「2025年度新規開業実態調査」売上の増加傾向・予想月商の達成開業後平均1年強の時点の数字
利益率(参考)中小企業庁「中小企業実態基本調査」業種別の売上高経常利益率開業したばかりの会社に限らない

ネットで見かける「起業の成功率」という数字の多くは、このうち存続だけを指しています。存続していれば成功、とみなすのは物差しとして甘い面もありますが、業種ごとの差がもっともはっきり出るのも存続です。そこで次の章では、まず存続から比較します。

なお、どの統計も「平均的な姿」を示すものです。同じ業種でも、立地や規模、経営者の経験によって結果は大きく変わります。数字は業種を選ぶときのおすすめの出発点として使い、最後は自分の条件に当てはめて判断してください。

出典日本政策金融公庫 総合研究所「「新規開業パネル調査」~アンケート結果の概要~」

存続で比較:5年間の廃業割合が低い業種と高い業種

業種別の5年間の廃業割合を比較したイラスト

日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業パネル調査」(2021年12月公表)は、2016年に開業した3,517社(不動産賃貸業を除く)を2020年末まで毎年追いかけた調査です。2020年末までに廃業した企業の割合は8.9%、存続した企業は89.7%でした(残りは存続か廃業か不明)。

追跡した会社3,517社2016年に開業
5年間で廃業8.9%2020年末時点
存続89.7%同じく2020年末
平均従業者数3.0→5.6人開業時→2020年末
業種別の廃業割合(2016年開業→2020年末)
2020年末までに廃業した企業の割合(業種別、日本政策金融公庫「新規開業パネル調査」2021年12月公表)。

廃業割合がもっとも低かったのは建設業(5.2%)で、個人向けサービス業(5.8%)、運輸業(6.6%)、卸売業(6.7%)が続きます。反対に高かったのは飲食店・宿泊業(14.7%)、小売業(13.2%)、不動産業(12.1%)でした。いちばん低い業種と高い業種では、およそ3倍の差があります。

この5年間には、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行が含まれます。同じ調査では、マイナスの影響を受けた割合が飲食店・宿泊業で97.5%と最も高く、教育・学習支援業も96.6%でした。対面で接客する業種ほど、外からのショックに弱いという面が、廃業割合にも表れていると考えられます。

ただし、これは1つの時期に開業した会社の記録です。調査対象も公庫から融資を受けた企業に限られます。「建設業なら続く」と言い切れるものではなく、業種ごとの傾向をつかむための比較材料として読むのがおすすめです。

出典日本政策金融公庫 総合研究所「「新規開業パネル調査」~アンケート結果の概要~」

黒字で比較:開業直後の赤字は、数年でどこまで戻るか

開業後の黒字基調の割合の推移を示したイラスト

2つ目の物差しは黒字です。新規開業パネル調査で採算の推移を見ると、開業した年の年末に「黒字基調」だった会社は50.9%でした。開業1年目は、ほぼ半分が赤字ということです。

黒字基調の割合(2016年開業企業)
黒字基調の割合の推移(日本政策金融公庫「新規開業パネル調査」。5回すべてに回答した888社)。単位は%。

その後は年を追うごとに上がり、2017年末に70.7%、2018年末に75.0%、2019年末には76.1%まで高まりました。2020年末はコロナ禍の影響で62.8%に下がっています。赤字で始まっても、2〜3年目に黒字に転じる会社が多いというのが、この数字の読み方です。

最新の「2025年度新規開業実態調査」(2025年8月時点、開業後1年以内に公庫が融資した企業が対象)でも、採算が黒字基調の割合は67.0%、赤字基調は33.0%でした。開業からの経過月数が平均1年強の時点の数字です。

業種別の黒字割合は公表されていません

  • パネル調査・実態調査とも、黒字基調の割合を業種別に並べた表は公表資料にありません。
  • 「この業種は黒字になりやすい」と書いている記事は、別の統計(利益率など)を使っているか、根拠が示されていないことが多いです。

黒字の物差しで業種を比べたいときは、次の章で扱う中小企業庁の利益率の統計を併せて見るのが現実的です。

黒字になるまでの期間は、手元の資金で耐えるしかありません。会社設立の時点で、少なくとも1年分の赤字に耐えられる資金計画を立てておくことが、どの業種にも共通するおすすめの備えです。

出典日本政策金融公庫 総合研究所「「2025年度新規開業実態調査」~アンケート結果の概要~」

売上の伸びで比較:開業者の6割が「増加傾向」

開業後の売上と従業者数の伸びを示したイラスト

3つ目の物差しは売上の伸びです。2025年度新規開業実態調査では、現在の売上が「増加傾向」と答えた開業者は60.1%、「横ばい」が34.0%、「減少傾向」は5.9%でした。開業前に予想していた月商を達成した割合も58.7%あります。

売上が増加傾向60.1%2025年度調査
予想月商を達成58.7%達成率100%以上
月商100万円未満39.5%小さな規模が多い
開業に満足74.8%かなり+やや満足

伸びを長い目で見るなら、パネル調査の従業者数が参考になります。1社あたりの従業者は開業時の3.0人から、2020年末には5.6人に増えました。従業者が「1人」の会社は39.9%から26.1%に減り、「10〜19人」は2.7%から9.7%に増えています。

ここで気をつけたいのは、廃業割合が低い業種と、大きく伸びる業種が同じとは限らないことです。存続を重く見るか、伸びを重く見るかで、おすすめの業種は入れ替わります。業種別の伸びを示す公的な数字は限られるので、人を雇って規模を広げられる業種かどうかを、自分の事業計画で確かめておくのが確実です。

経営者自身の収入も見ておきます。パネル調査では、経営者の1か月あたりの事業からの報酬は、開業した年の年末が平均27.4万円で、開業直前の勤務収入(平均35.9万円)を下回りました。その後は増え、2019年末には54.7万円になっています。最初の1〜2年は、収入が下がる前提で生活費を見込んでおくのがおすすめです。

出典日本政策金融公庫 総合研究所「開業者に占める女性比率の上昇と開業の小規模化が継続~「2025年度新規開業実態調査」アンケート結果の概要~」

3つの物差しを重ねて業種を比較する

存続・利益率・外部ショックへの強さを重ねて業種を比較したイラスト

ここまでの数字を重ねて、主な業種を比較します。存続はパネル調査の廃業割合、利益の出やすさは中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和7年確報、令和6年度決算実績)の売上高経常利益率、外からのショックへの強さはパネル調査のコロナ禍の影響を使います。

主な業種を3つの物差しで比較(数字の出典は本文のとおり。利益率は開業したばかりの会社に限らない中小企業全体の値)
業種5年間の廃業割合売上高経常利益率コロナ禍のマイナス影響
建設業5.2%(低い)5.71%79.5%
情報通信業7.7%6.28%82.9%
小売業13.2%(高い)2.61%(低い)84.0%
飲食店・宿泊業14.7%(高い)4.26%97.5%(高い)
不動産業12.1%(高い)8.98%(高い)75.0%

表から分かるのは、すべての物差しで上位に来る業種はないということです。建設業は続きやすい一方、帝国データバンクの2025年調査では後継者不在率が業種別で最も高い57.3%で、長い目で見た担い手の課題を抱えています。不動産業は利益率が高い反面、開業してからの廃業割合も高めでした。

小売業と飲食店・宿泊業は、廃業割合が高く、利益率も高くない業種です。それでも開業する人が多いのは、経験を生かしやすく、始めるきっかけを作りやすいからでしょう。続けにくい業種を選ぶなら、資金と準備を厚くするという考え方が、数字に沿ったおすすめの備え方です。

業種別の利益率を3年分の推移や会社の規模別に比較したい人は、利益が出やすい業種の記事で詳しく扱っています。始めやすさで比べたい人は開業におすすめの業種の記事をどうぞ。

出典中小企業庁(政府統計の総合窓口 e-Stat)「中小企業実態基本調査 令和7年確報(令和6年度決算実績)」

業種より効いている:経験・開業費用・準備期間

存続した会社と廃業した会社の違いを比較したイラスト

同じパネル調査を分析した論文(日本政策金融公庫論集 第54号、2022年2月)では、5年間で廃業した会社と存続した会社の違いが整理されています。業種の差よりもはっきりしているのが、開業する人の経験と準備の差です。

存続した会社と、廃業した会社
存続企業と廃業企業の比較(日本政策金融公庫論集 第54号「2016年に開業した企業の5年間の動向」)。

斯業経験、つまりいまの事業に関連する仕事の経験がある人の割合は、存続企業で85.9%、廃業企業で69.4%でした。開業費用の平均も、存続企業の1,001.7万円に対して廃業企業は720.5万円と少なく、開業準備にかけた期間も存続企業が9.5カ月、廃業企業が7.9カ月と短くなっています。

論文では、廃業企業には自己資金が少ない、前職を離れずに開業している、といった特徴も挙げられています。経験のある分野で、時間とお金をかけて準備した会社ほど続いているということです。成功しやすい業種を探すより、成功しやすい始め方を選ぶほうが効く、と言い換えることもできます。

開業費用が多いほど廃業しにくい、という結果は意外に思えるかもしれません。小さく始めること自体が悪いのではなく、事業の規模に対して準備が足りないまま始めるのが危ない、と読むのが自然です。事業の規模に見合った資金と、半年以上の準備期間を確保してから始めるのがおすすめです。会社設立の費用も含めた資金計画は、資金計画の記事で比較しています。

出典日本政策金融公庫 総合研究所「2016年に開業した企業の5年間の動向─「新規開業パネル調査(第4コーホート)」結果から─」

成功しやすい業種を自分で選ぶ手順と、会社設立の前の確認

成功しやすい業種を自分で選ぶ手順を示したイラスト

ここまでの比較をもとに、成功しやすい業種を自分で選ぶ手順をまとめます。ランキングから選ぶのではなく、自分の物差しと経験から候補を絞るのがポイントです。

業種を選んでから会社設立に進むまで

  1. 自分にとっての成功を決める(長く続けたいのか、利益を残したいのか、規模を広げたいのか)
  2. 経験のある分野を書き出し、その業種の廃業割合・利益率・外からのショックへの弱さを比較する
  3. 弱点のある業種なら、自己資金・準備期間・最初の顧客の当てを厚めに用意する
  4. 許認可と事業目的を確かめてから、会社設立の手続きに進む
設立前のチェック
会社設立の前に確かめておきたいこと(業種を問わない共通の項目)。

創業期の資金は、日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金のような創業向けの融資で補う人が多くいます。公庫の公式ページ(2026年10月確認)では、新たに事業を始める人や事業開始後おおむね7年以内の人が対象で、融資限度額は7,200万円とされています。審査があり、創業計画書の提出が求められます。

融資の申し込みの流れは公庫の創業融資の記事で比較しています。許認可が要る業種かどうかは会社設立の業種一覧の記事で確認してください。

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出典日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

まとめ|成功しやすい業種は、物差しと準備で決まる

起業で成功しやすい業種のまとめイラスト

起業で成功しやすい業種は、成功を何で測るかで変わります。一次統計を使って比較すると、次のことが言えます。

この記事で押さえたこと

  • ✓成功は「存続」「黒字」「売上の伸び」の3つに分けて考える。どれか1つで業種を選ぶと、ほかで落とし穴に当たる。
  • ✓2016年開業の会社の5年間の廃業割合は8.9%。建設業5.2%・個人向けサービス業5.8%が低く、飲食店・宿泊業14.7%・小売業13.2%が高い。
  • ✓黒字基調の割合は開業した年が50.9%、3年後の2019年末は76.1%。赤字で始まり数年で黒字に転じる会社が多い。
  • ✓2025年度調査では、開業者の60.1%が売上を増加傾向と答えている。
  • ✓存続した会社は、斯業経験のある人が多く(85.9%)、開業費用と準備期間にも余裕があった。

業種選びの全体像は会社設立 おすすめ 業種のまとめにあります。数字は2026年10月時点で確認できた日本政策金融公庫と中小企業庁の公表資料によるもので、調査の対象(公庫の融資先など)と時点によって変わります。会社設立の前には、所管の窓口や税理士などの専門家にも確認してください。

出典中小企業庁「創業支援等事業計画について」

業種を選ぶ前に、自分の「成功」の物差しを決めてください

長く続けたい人と、早く大きくしたい人とでは、おすすめの業種が違います。存続を重く見るなら廃業割合の低い業種、伸びを重く見るなら従業者を増やしていける業種、というように、物差しを決めると候補が絞れます。

そして、どの業種を選んでも、統計がくり返し示しているのは「経験のある分野で、準備をして始めた人ほど続いている」という事実です。業種の比較と、自分の経験の棚卸しを並べて考えてみてください。

候補が決まったら、許認可と会社設立の段取りに進みます。当サイトのほかの記事も、比較の材料として使っていただければうれしいです。

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この記事の編集体制 合同会社FIELDの関連会社である会計事務所および税理士法人と内容を確認しながら編集しています。各サービスの料金・条件は、公式サイトの表示を確認できた範囲のみ掲載しています。
記載している金額・期間・制度は2026年10月時点で確認できたものです。制度は変わることがあるため、手続きの前に法務局・公証役場・税務署などの一次情報をあわせてご確認ください。判断に迷う点は、税理士・司法書士・行政書士などの専門家や所管の官庁にご相談ください。

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